中国女性のホンネ Vol.2~ベンチャー企業勤務・陳さんの場合・後編~
上海在住、インターネット系ベンチャー企業に勤めている陳さん(36歳)にお話を伺っている中国トレンドExpress。
前回は安定した生活をしていながらも、常に自身を磨く努力を続けている姿が垣間見えました。今回のテーマはそんな陳さんのショッピング事情やそのための情報収集。さらには比較的安定した生活の中での悩みについても語ってもらいました。
text & photo:配島亜希子
Space:Evolution Park(上海市)
今回のお客様
氏名: 陳奕君
年齢: 36歳
婚姻状況: 未婚(離婚歴1回)、子供なし
月収: 月収2.7万元(約45万円)
勤務先: インターネット企業(民間・中小企業)
部署/職位/勤務年数: マーケティング部、主管、半年
学歴: 復旦大学(学士)
家族構成: 父、母、本人
生活状況: 両親の持ち家(静安区)に同居、自身で車(AUDI アウディ)を所有
趣味: ドラマ・映画鑑賞、ドライブ
スキンケアは品質重視の海外ブランド、メイクは国産で
女性のネット購入必需品といえば「化粧品」。
皮膚アレルギーを持つ陳さんは、化粧品を選ぶ際には成分と安全性を重視。「週末など家にいる時は化粧する必要がないので、スキンケアを大事にしています」と、ご多分に漏れず、スキンケア化粧品にはお金をかけています。
日本ブランドは安全面で信頼できると、今は無添加化粧品「ハーバー(HABA)」の化粧水や美容オイル(スクワラン)がお気に入り。
中国の美容医療の化粧品ブランド「可復美」の「コラーゲンフェイスマスク」5枚入198元(約3,300円)も愛用中。
しかし中国語で「彩粧」と呼ばれるメイクに関しては「高級ブランドのメイク化粧品は必要ありません。いろんな色やメイクを試したいので、国産ブランドのチープなものをちょこちょこ買います」と話してくれました。
スキンケアは品質重視で海外ブランド、メイクは比較的価格の低い国産ブランドと使い分けているようです。
代購から「T-Mall」のブランドショップへ
そんな陳さんの化粧品、購入は「T-Mall」内のブランド旗艦店が多いとのこと。同サイトは「購入者のレビュー、クチコミを見ることができるので参考になる」と言います。
もともと「海外商品が安く買える代購(ソーシャルバイヤー)を利用していた時期もあった」と語る陳さん。しかし最近は、代購もECサイトも、さらにブランドオンラインショップも、価格には大差が無くなってきました」と現状を分析。
Taobaoや価格比較サイトで安い売場を探していましたが、価格差がなくなりつつある今は、そのまま気にせず「T-Mall」で買うとのこと。
2019年1月、「電子商務法」(通称「電商法」)が施行され、「ソーシャルバイヤーが規制されるのでは?」と日本でも注目されました。
実はそれより以前から、正規輸入や越境EC、ソーシャルバイヤーが販売する商品の顕著な価格差は解消されつつあり、ECプラットフォームも買い手の不利益にならないシステムが確立されています。
そのため、現在では消費者は多くのチャネルで、適正な価格での購入ができるようになってきました。
一昔前は「安心できるチャネル」での買い物が大きな関心事ですが、消費者が個人の習慣やキャンペーンの有無などに基づきながら、多様なチャネルの中から、自分の好きなチャネルを選んで買い物をすることができるようになりつつあるのかもしれません。
情報収集は「WeChat」の「訂閲号(購読アカウント)」
こうした化粧品の選択に必要なのは情報。特に判断材料にしているのはお気に入りブログと友人のクチコミ、さらにそれらから見える商品成分表。アレルギーがあるので商品成分表は必ずチェックが必要なのです。
以前はブログやクチコミ、情報サイトを手当たり次第にブックマークしていたようなのですが、その中から自分のニーズや感覚とマッチするものだけを取捨選択して、スマホに残していると言います。
化粧品だけでなく、美容やエステ、旅行、仕事関連など、彼女の情報収集はWeChatとWeiboが中心。
特にWeChatの比重がわりと大きく、公式アカウントの「訂閲号(購読アカウント)」を次々と登録し、最終的に自分の嗜好に合うアカウントだけを残すそうで、美容医療やスキンケアに関するWeChatの「訂閲号(購読アカウント)」でいくつかお気に入りがあり、信頼しています。
またWeiboに関しては見るだけで自ら発信はしないとのこと。
以前、Weiboと言えばクチコミの代表でしたが、今ではオフィシャルな情報プラットホームのような印象に。それらの情報の確認をするツールが、WechatなどのSNSとなっているようです。
独身女性にありがちな母娘関係の悩み。また将来の投資も忘れずに
「悩みはありますか?」という質問に対し、「友人たちは結婚や子育てに日々悩んでいて大変そうです。私は皆と比べると悩みは少ない方」と言います。
逆に、両親に頭を悩ませている陳さん。
市中心にある両親の持ち家に同居し、両親はすでにリタイヤして年金や投資で生活、年に数回海外旅行に行き、経済的・時間的に余裕のある生活を送っています。
「母親が自分の主張を押し付けるので煩わしい」と、母親との程よい距離感を常に意識しているそうです。日本の30代独身女性にも同じような状況が多いかもしれません。
同時に、陳さんは「自分の家が欲しい」と言います。
親から完全に自立し、自由な空間を手に入れたいのです。離婚経験がある彼女は、家庭を持つよりも、ビジネスウーマンとして頑張ってゆく方向性です。
しかし、家が欲しい理由は単純に「親から解放されたい」だけではなく「経済的プレッシャーから解放されたいという想いのほうがより大きい」と言います。
36歳といえば、将来への不安を感じ始める年齢。家などの固定資産があれば多少は安心でき、うまく投資運用すれば経済的安定も得られます。
それと並行して、彼女は勤めている会社の自社株を保有し、会社が成長して配当金を受け取ることを期待しています。
不動産投資、株式投資で経済的安定を図り、自分のキャリアを積み重ねてゆく、そんな人生こそが今一番欲しいものだと言います。
【おまけ】「鞄の中をみせてください」
最後に無茶なお願い「鞄の中をみせてください‼」。
お願いしてみると、陳さんは意外にも快諾。「MCM」の小さめのリュックの中身を見せてくれました。
気になる中身は、スマホ、ノートと万年筆、化粧ポーチ(スキンケア類)、口紅、ハンドクリーム、UVクリーム、フレグランスサプリメント。社外で会議がある場合はここにノートPCが加わるそうです。
比較的シンプルな中身ですが、実は彼女「今日は取材のためにバッグを持参しましたが、いつもはスマホひとつで外出しています」と、普段はバッグを持ち歩かないことが多いと教えてくれました。通勤も含め、ほとんど自分の車で移動するので、ハンドクリームなどは車内に常備しているとのこと。
さらに「(生活が)スマホひとつで事足りるので、財布や現金は持ち歩かない」こと。そのため、財布を入れるバッグ自体も使用頻度が減っているのです。
中国人にとっては「アリペイ(Alipay/支付宝)」と「WeChatPay(微信支付)」の決済アプリは必須アプリ。
近年は「クレジットカード使用不可」なんて店舗すらあります。また地下鉄やバスに乗るときも、交通系ICカードアプリを利用します。コンビニはもちろん、野菜市場や個人商店、自動販売機、露店でさえも、今はスマホ決済の時代であるということを感じさせてくれる回答でした。
ネット業界に従事していることもあり、ITやトレンドに敏感な陳さん。ネットの恩恵で便利になった世の中で、情報収集やショッピングなど、上手に活用して生活していることが伺えます。
同時に、便利な社会に安定せず、上昇志向を持ち、現実をしっかり捉え、キャリアビジョンに合わせて自らを磨くことに余念がありません。
とはいうものの、尽きることのない将来への不安。そんな不安を不動産や株を通じて着々と打ち消していこうとする、現代の30代独身女性の姿でした。