【中国コンテンツBiz】 金があっても、モノがない! 中国ジャンプ世代の熱き小宇宙とユニクロの戦い!
日本でも多くのファンを喜ばせたユニクロUTと今年創刊50周年を迎える「週刊少年ジャンプ」とのコラボTシャツ。日本での発売から一週間遅れ、同商品が中国でも販売されたのですが……。
中国中で大きな注目を浴びたこのイベント、日本アニメや漫画の「熱血、友情、夢」の中で成長した中国80後、90後の消費者たちが叫んだのは「お金があっても、モノがない!」という悲鳴でした。
今回はまず、イベントの模様をお伝えします。
4月16日、ユニクロUTが、今年創刊50周年を迎える「週刊少年ジャンプ」とコラボレーションしたTシャツを中国でも発売開始。
週刊少年ジャンプといえば創刊以来、日本の青少年の胸を熱くさせたヒーローの宝庫ですが、今回はそんな歴代の人気漫画・ヒーローから「DRAGON BALL」「キャプテン翼」「聖闘士星矢」「幽☆遊☆白書」「ONE PIECE」「NARUTO‐ナルト‐」「BLEACH」などが選出され、販売されました。
T-mallで販売開始10分ほとんど売り切れ?!
発売日となった4月23日(月)。商品は午前0時に、T-mallの旗艦店で一足早く発売開始。ところが…。
開始10分でほぼすべての商品が「完売」状態に。なかでも人気の「Tシャツ」は販売開始2~3秒内ですべてが完売。ネット上には悲鳴が溢れかえりました。
- 「秒殺??」
- 「12時に(旗艦店の)ページをリロードしたらxsサイズが売り切れになってた!」(女性ファンがおおいため)
- 「ユニクロは中国の人口を知らないの?」
- 「好きなTシャツが秒で無くなった!躊躇したTシャツも悩んでいる間に無くなった…」
こうした消費者は泣きながら、「朝店頭へ!」と、店頭販売に買いに行く約束をしました。
平日なのに店に殺到する消費者たち
店頭販売も同じ4月23日(月)。開店時間は店舗によって異なりますが基本は9時か10時。
お気づきの事とは思いますがこの日は「平日」、仕事や学校があるはず。しかも当日は中国各地に大雨が降っていました。
しかし、ネット販売が上述のような状況だったせいか、開店前には長蛇の列が。
そして迎えた開店だったのですが、2時間後には人気Tシャツは全サイズ売り切れ、子供用のTシャツも例外ではありませんでした。
- 「とりあえず好きな柄を奪い取る。サイズを選ぶ暇なんてない!」
- 「金はあるのにTシャツがすでにない!」
などなど、ネット同様、悲鳴が飛び交う状況が展開されました。
結局、購入できなかった大多数の消費者たちの失望と怒りは、ネット上でユニクロスタッフへとむけられ、
- 「そもそも在庫が少ないんじゃない?!」
- 「もしかしたら店員が全部買いしめているの?」
などなど、辛辣な言葉が並んでいました。
この発言にコメントに対し、自称店舗スタッフが反応。
- 「ユニクロの店員は新商品の発売後、3日たたないと購入できないルール。自分だって買いたかったけど、もう泣くしかない…」
- 「在庫が少ないんじゃない!買う人が多すぎたんだ!」(今までのコラボTシャツと同じ数を用意したらしいです。)
Tシャツがないなら紙袋へ?
このドタバタで買えた人たちは余裕と自慢を見せてSNSに投稿しています。この時、みんなのポイントになったのが、買ったTシャツの写真と共に、必ず「コラボ紙袋」の写真を載せること。
今回のコラボ紙袋は、週刊少年ジャンプ歴代の人気キャラクターがモノクロで印刷され、そこにユニクロの赤いロゴがアクセントになっており、きわめて「かっこいい」と評判のデザイン。
Tシャツにプリントされたのは1枚につき1作品もしくは1キャラクターのみ。それに比べ、コラボ紙袋は一気にたくさんの人気キャラクターが集まっているもの。
そのため、Tシャツ同様、いえ、Tシャツ以上の人気を、この紙袋は集めてしまったのです。「丁寧にカットして額縁に飾る」消費者や、「モノクロの紙袋に自分で色を塗る」消費者もおり、その喜びをSNS上で爆発させていたのでした。
しかし、この人気がまた別の騒動を巻き起こしてしまったのです。
メイン商品であるTシャツも完売となった時、購入できなかった中国の消費者が思ったのは「せめて紙袋だけでも…」。Tシャツを購入できた人はもちろん、購入できなかった人も、こぞって紙袋Getへと動き始めました。
しかし、当たり前の話ですが、コラボ紙袋も無限にあるわけではありません。ユニクロ上海旗艦店は「500元(約8,500円)以上の購入の場合のみコラボ紙袋を提供」というルールを設定し、なんとか「紙袋の品切れ」を防ごうとしました。
しかし皮肉なことに「プレミア感」がさらに高まり、消費者の中にはネット上でコラボ紙袋だけを「転売」する人も現れてしまったのです。
日本人に負けない「ジャンプ愛」?!
さてさて、ここまでの盛り上がり。そこにはまず1か月半の周到なプロモーションがありました。時系列に従って見ていきましょう。
3月2日
Weiboオフィシャルアカウントで告知。ジャンプ50周年ロゴと「Relax~お楽しみはこの後で!」のキャッチコピー。
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コメント:965件
ファン同士でが「好きな作品」や「何枚買うか」、の話さらに「Tシャツにしてほしい作品」を語り合うなどの盛り上がり(この時点ではTシャツの画像は何もなし)
3月21日
プロモーションムービー公開。コラボ作品名を一斉発表。
リツイート:4513件
コメント:1277件
「どうしてレディースがないの?」というコメントがSNS上に溢れる(ターゲットを男性および子供と設定していた)。
4月2日
発売するTシャツ人気投票イベント開催。
リツイート:7979件
コメント:1万超
投票結果は1位~4位がすべて「ONE PIECE」。ほかに「黒子のバスケ」「NARUTO‐ナルト‐」「DRAGON BALL」などがトップ10入り。
このように、ユニクロも上手にプロモーションを行い、消費者を温めてイベントへとつなげていったことが見て取れます。ただ、今回は「中国消費者のジャンプ愛」が予想をずいぶんと上回っていた、ということだったのかもしれません。
しかし、よくよく考えてみれば「中国で週刊少年ジャンプが、なんでここまで人気なの?」という疑問が浮かんでくると思います。
次回、週刊少年ジャンプが刺さる理由と消費者について分析してみましょう。