見えない中国を見える化するデータ分析とは? 中国データを語るウェブセミナーリポート Vol.2
大好評となったカネボウ中国の宮下董事の登壇によるウェブセミナー『見えない中国市場を「見える化」 データ分析による課題解決実践法!』。前回は中国のデータをめぐる環境に関する話で盛り上がっていた。
今回はいよいよカネボウ中国においてデータ分析をどのように行っているのか、そして中国ならではの事象や手法について深堀りを進めていった。
<登壇者>
宮下 和也
Profile
佳麗宝化粧品(中国)有限公司 董事 事業統括本部統括本部長
兼)花王中国投資公司 化粧品事業部市場本部長
96年:花王入社 家庭品(パーソナルケア)事業本部
※スキンケア~ヘアケアの各ブランド戦略を担当
09年:KCMK(販売戦略部門)・化粧品担当
※日本国内の化粧品販売MKを担当
12年:ソフィーナ事業部 ブランドマネジャー
20年:佳麗宝化粧品(中国)有限公司(カネボウ中国)
董事 事業統括本部統括本部長
兼)花王中国投資公司 化粧品事業部市場本部長
<モデレーター>
濱野 智成
Profile
トレンドExpress代表取締役社長
大学卒業後、世界有数のコンサルティングファームであるデロイト・トーマツ・グループに入社。120社以上への経営コンサルティング支援を行い、グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。株式会社ホットリンクに参画後、COO(最高執行責任者)としてグローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事、コーポレート部門を統括。新規事業として立ち上げた株式会社トレンドExpressをカーブアウト型で分社化して代表取締役社長に就任。累計資金調達12.8億円を先導し、クロスボーダービジネスの先駆者として東京と上海をベースに活動中。
▼前回分の記事は
見えない中国を見える化するデータ分析とは? 中国データを語るウェブセミナーリポート Vol.1
データの「なぜ」を突き詰めることで、見える中国市場理解
データを集めることで徐々に可視化されていく中国市場。しかし、それをより正しく把握していくためには中国の社会的背景への理解が不可欠だ。カネボウ中国ではデータに対して「なぜ」をぶつけることで理解を深めている。
濵野 私もカネボウの皆様とお仕事をしていると、ドリルダウンを繰り返して「本当に消費者はそう思っているのか?」、「なんでそう思っているのか?」という定性的なアプローチみたいなところを突き詰めているように思います。
「あ、そうなんだ」で終わらないところが、こちらも本当にいつも勉強させていただいているポイントかなと。
特に面白い取り組みが「データ分析のレポートって、一人で見るものじゃない」というところで、皆さんのこだわりかなと思っているのですが、そうした取り組み事例を少しご紹介いただけますでしょうか。
宮下 現在トレンドExpressさんと共同で行なわせていただいている分析もそうですね。
やっぱりこの中国で、まあ自分も日本人としてこっちに来ているので、分析から出てくる言葉(キーワード)の意味が分からないといけない。
ただそれはここで生活して、ここで生きてきた人間からしてみたら「(その場合であれば、)至極当然、その言葉が出てくる」、「腑に落ちた言葉である」といったことも結構ありますね。
逆にそれを対話・会話のテーマに上げることで、「本質的に何がその背後にあるのか」ということを解釈・理解することができます。さらには、今の現象としてこういう言葉が出てきたものの、我々が行きたい場所が別の方向にあった場合、「どういう風にそちらの方向に向けて行けばいいのか」、「どういう活動をしていけば、こういうことがもっと増えるか」も話し合うことができます。
例えば「UV(日焼け止め)」の話をしていた時に、中国では独自の習慣として「軍事訓練」というキーワードが必ず出てくるんです。
知らないと「なぜそこで軍事訓練なの?」という話になりますが、コミュニケーションをしていくと、中国では、中学生ぐらいから軍事訓練に行く機会があるんです。そこで初めて UV を使う機会がある。そこで初めて自分の目で商品やブランドで触れる場ができる。
こういった、自分としては知らないことだと気づくきっかけにもなるし、それを膨らませて、具体的な施策の内容に言及したり、発展したりといったことはよくあります。
濵野 そうですよね。ありがとうございます。
そこまでの消費者分析を毎月行っている日本企業は結構稀かなと思っております。
ただ、毎月見た方が絶対にそのモニタリングの精度は上がっていくと思いますし、その中でPDCAが早まっていくこともあると思います。
また中国のトレンドは早いので、中期で見る、もしくは毎月見ていくことで、その市場の変化をいち早く捉えるというのが市場競争力にもなってくると思います。
その中でも「このキーワードが上がってきたのはなんで」っていうところですね。
私もよく感じているのが、例えば中国の方にとっては当たり前だから、スルーしちゃうポイントがあったり、逆に日本人だと全然それが消費者インサイトとは思えず見逃してしまう部分もあったりします。したがって、ブランドのチームの日本人メンバーと中国の方々と、またその分析を実際に手がけた弊社メンバーと一緒に、「机を囲んで」と言ったら変ですけども、それぞれで「消費者インサイトがどういうものなのか」という本質を探っていくといったことが重要ですね。
さらにOA というか、そのオピニオンをしっかりと捉えていくことも、定性的データへのアプローチ方法として大事かなと思っています。
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