【コラム】 中国事業担当者なら知っておきたい 職場で役立つ「教養のススメ」~中秋節って?~
中国事業に携わっていると、避けて通れないのが多種多様な文化イベントにであう。こうした歳時記イベントも、中国消費者の日々の生活を知る、価値観を知るうえで欠かせないものだ。
そこで、おさらいの意味も含めて中国事業担当者としては知っておきたい中国のイベントを、基礎から紹介。今回は日本にもなじみの深い、秋のイベントを見てみよう。
今日のテーマ【中秋節】
中秋節とは、いわゆる「中秋の名月」、8月15日の十五夜の月を愛でる日である。
日本と異なるのは、中国では旧暦(農歴)で祝うこと。そのため、中秋節の具体的な日にちは春節同様、毎年変わる(2019年は9月13日)。
中秋とは、まさに「秋の真ん中」という意味。
旧暦の8月半ばはすでに秋、農作物の収穫が終わり、ホッと一息ついたタイミングに、月を愛で、美味しい料理を食べ、酒を飲み、一年の労をねぎらうという意味合いがあったと言われる。
なので、この日の最も重要な風習というのは、もちろん「お月見」…、と思われるだろうが、実はそうではない。中秋節で最も重要なのは「一家団欒」である。
もともと中秋節は一年でもっとも満月が美しく見える日であり、それを楽しむ日である。歴史は古く、隋唐期にはすでに広く行われていたという記述があり、日本のお月見などもその影響を受けている。
しかし、同時にそれを家族で楽しむ、というのが徐々に習慣化し、今では春節に次ぐ「団欒の日」として過ごされているのだ。
そこには、「丸い月のように家族が輪になって、仲睦まじく」という願いが込められているのだという。
そんな背景もあり、2008年からは「端午節」などとともに、正式な「法定休日」に指定された。
というのも、平日にしてしまうと残業などによって、夜、家族そろってお月見という風習が楽しめなくなってしまうためだ。
まさに国家レベルで支援している伝統イベントなのである。
欠かせないのが「月餅」
この日、欠かせないのが「月餅」である。
近年は日本でも見かけるようになった月餅、タピオカに次ぐ中華スイーツブームの主役となる…、定かではないが、ともかく満月のような丸い形の月餅を食べるのが、今でも続く習慣になっている。
一口に月餅と言っても、その様式は4大月餅と言われる「蘇式(蘇州を中心にした江南)」、「京式(北京周辺)」、「広式(広東省周辺)」、「潮式(広東省潮汕地区)」のほか、近年は「滇式(雲南省)」など様々。
さらにはその中身も、甘い餡子のようのものが入ったもの、肉、塩漬けタマゴの黄身が入ったもの、ココナッツ風味の餡など、多岐に富む。
こうした地方の味の違い、ニーズの違いを楽しむのも一興だろう。
また、伝統的なお菓子メーカーだけでなく、スターバックスやハーゲンダッツなども、この時期には趣向を凝らした月餅を販売するので、そうした商品を研究してみるのも楽しい。
面白いのが、2000年代に特別な「月餅包装規定」が出されたことだ。
これは中秋シーズンに販売される贈答用月餅のパッケージ(外側の盒や中身の包装)について細かく取り決めたもので、包装と月餅内容量の比率などに及んでいる。
これは、以前は月餅シーズンの競争を勝ち抜くための過剰包装が流行ったり、その包装内の月餅の量が極端に少なく「箱を買ったのか月餅を買ったのかわからん!」というクレームが相次いだこと。
さらには、「数十万元の月餅」と称して金の仏像や、なかには郊外の不動産を抱き合わせで販売する、といったことまで発生していた。
さらにはそうした「超高級月餅(?)」を企業が購入し、行政関連部門の幹部へ…などということも横行し、それ以降行政が厳しく管理し始めたのである。
月餅とは良くも悪くも、中国の生活に欠かせない食べ物なのである。
中秋節、マーケティング的に見ると?
さて、この中秋節、前述のように「一家団欒」で過ごすのが基本的なルール。どんな家庭でも、この考え方から離れることはできない。
一説では、必ず家族と集まる日であるため「春節と中秋節は借金の期限」に定められていたとか(ようは逃げられない)。
こういったイベントで最も売れるのが、当たり前だが「月餅」なのだが、それ以外のものを非常によく売れる。こうしたイベントはまさに小売業における「商戦」なのである。
多く売れるものが家族で食べるお菓子類。中国ではヒマワリのタネや山査子のお菓子など、伝統的なものが日常生活の中に根付いているため、こうした「ちょっとつまむもの」が販売量を伸ばす。
とはいうものの、近年は高価な商品なども売り上げを伸ばすという。
日本ではあまり家族間で贈り物をするという習慣は少ないが、中国では歳時記に合わせて家族、特に年長者への贈り物が増える日。
そのため中年~高齢者向けのサプリメントや年長者向けのファッション、健康器具なども出るという。特に大都市で暮らす地方出身者、大都市出身でも同居していない夫婦などはこうした物を手土産に実家に帰ることが多いという。
また、「一家団欒」、「春節のお祝い」をテーマにしたキャンペーン、訴求も増えるシーズンだ。
以前、動画マーケティングの記事で紹介した「P&G」の家族愛をテーマにした動画が中国消費者に刺さった案例を紹介したが、春節に次いでこうしたテーマが刺さりやすい日でもあるのである。
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中秋節は多くの伝統イベントの中でも重要度の高いイベントである。こうしたイベントへの心理を理解したうえで、マーケティングに活用するべきであろう。