中国トレンドExpress

電子商務法で爆買いは終わったのか? 施行後初のソーシャルバイヤーイベント、果たして…。

今年1月1日、中国で新しい法律が施行されました。『電子商務法(通称「電商法」)』です。それによって、一部では「日中間に存在しているソーシャルバイヤー(代購)たちは消滅する」という情報が、中国事業を行う日本企業を中心に流れました。

その施行から約半年後の5月18日、東京都内で関東圏を中心に活動するソーシャルバイヤーと、日本のメーカーが直接コミュニケーションを行うイベント「ソーシャルバイヤーexpo2019春」が開催されました。

注目の電商法施行後初となった大型のソーシャルバイヤーイベントの模様を、少しだけご紹介します。

(ソーシャルバイヤーに関してより多くの情報が必要ならデモアカウント登録を!)

『電子商務法』の施行後の状況は?

1月1日に『電商法』が施行されましたが、「登録の義務化」、「課税」などの大きな方向性は明記されていましたが、その法律を運用するための細則が発表されないままでした。

そのため、いったいどれだけの部分が法律の規制対象となるのか、どのように取り締まりを行うのかは全く不透明のまま。

結果、市場には憶測に近い情報が錯綜する状況になっていました。特に一部のメディアや企業では「ソーシャルバイヤーは消滅する」という情報を発信しており、日本企業にも不安の声が広がりました。

 

施行されたばかりの1月には日本の小売店や化粧品メーカーが売り上げ減少といった少なからぬ影響を受けており、その結果が決算発表やメディア報道などでも取り上げられたことによって、全体としても「ソーシャルバイヤーによる爆買い終了」といった雰囲気が流れることになってしまいました。

 

しかし『中国トレンドExpress』が施行後に行った中国での取材やソーシャルバイヤーへの確認などによって、1月の状況はソーシャルバイヤーがいったん「様子見」をしていたことによるもので、一部のバイヤーは不確かな噂を基に、商品の写真ではなく手書きの絵にしたり、暗号化してみたりといった対応をしながら活動していたことによるものという事実が見えてきました。

 

そして2月に入り春節シーズンに入ると日本では売り上げは回復。ソーシャルバイヤーたちも、従来の活動を再開させていったことを、日本の企業も実感。徐々に「ソーシャルバイヤーをチャネルとして活用」というチャレンジを考え始めたのです。

開幕!ソーシャルバイヤーexpo2019春!

そんななか開催された今回の「ソーシャルバイヤーexpo2019春」。日本の有名ブランド、約30社が出展し、日本で活動するソーシャルバイヤーと直接のコミュニケーションの場となりました。

 

会場となった都内の展示場では、13:00の開場にもかかわらず、10:00頃に訪れるソーシャルバイヤーが現れるなど関心の高さがうかがえ、会場前の12:00頃にはすでに入場を待つ列が。結果、15分繰り上げての開場となるほどの盛況となりました。

開場前には長蛇の列。子供を抱えたバイヤーさんの姿が目立つ

速報では半日で約1,000人のソーシャルバイヤーが来場となっていますが、週末での開催となったことで、多くのソーシャルバイヤーは子供連れ。そのため会場はソーシャルバイヤーの歓声と企業の商品紹介の声、そして子供の歓声で溢れました。

 

こうした姿に、初めてソーシャルバイヤーと接触する企業や取材メディアからは「普通の人たちなんですね」という率直な声が聞かれました。

日本企業にとって、なかなか「実体の見えない存在」という印象のソーシャルバイヤーですが、多くが主婦や留学生、もしくはサラリーマンといった人々。決して特別な存在ではないということが

 

とはいうものの、それぞれが中国国内に数百人~数千人のフォロアーを抱え、その信頼を受けているソーシャルバイヤー。日本企業の紹介を聞きながら、商品を手に取り、質問をしながら商品への理解を深め、同時にそれを自身のSNSを通じてフォロワーに紹介する姿が見られました。

ブースはどこも多くのバイヤーでにぎわった。スマホ片手に自身のSNSに投稿する姿も。

出展企業の中にはこの日のために数百セットの試供品を用意。体験をしてもらいながら、ソーシャルバイヤーたちの中国消費者目線での意見を集めており、中国市場向けの情報収集の場としても活用しているようでした。

会場で聞いたソーシャルバイヤーの回答は?

しかし、やはり気になるのは『電商法』。実際にどうなのか、少し聞いてみました。

 

多くのソーシャルバイヤーが「気にしている」模様。しかし、一部のソーシャルバイヤーは「法人化が必要なら法人化する」と回答していました。

つまり中国では依然として日本の化粧品や健康食品などのニーズが高く、また自身のフォロワーから信頼、頼りにされている。そのため、十分に事業として成り立つ、というのです。

 

また、一番気にしているのが物流の問題。

これまでは自身で箱詰めして、郵便局へもっていっていました。しかし電子商務法の影響で、郵送した商品が税関で止められるというケースも発生する可能性もあります。

 

その場合はソーシャルバイヤーへの商品供給アプリである「world X」を利用することで解決しているといいます。

同アプリではアプリ上で商品の買い付け、発送ができ、それらが各種規定にのっとったものであるため、電子商務法の影響も極めて少なくて済むという利点があります。

会場ではバイヤー向けアプリ「World X」の説明も行われた

電子商務法の施行によって、ソーシャルバイヤービジネスも転換期を迎えているのは事実の様です。しかし今回のイベントで見られたソーシャルバイヤーの言動から、それは一部で言われているような「消滅」に対しての恐怖ではなく、むしろ「合法化」の中で「いかに拡大するか」を考える、非常にポジティブな思考であるように感じられます。

 

彼らは日本の商品の良さを熟知し、それを伝えることで中国の消費者の信頼を獲得してきた存在。そうしたソーシャルバイヤーが日本における対中国事業の一翼を担っている状況が、しばらく続いていきそうです。