【中国EC商戦】「618」でダブルイレブンの勝敗が決まる③ ~中国商戦で勝つために春から始めるKOL~
中国市場向けプロモーションとして期待されているのが「KOL(Key Opinion Leader)」、すなわち中国におけるインフルエンサーマーケティングです。
このKOLマーケティングは、ECモールの外側・内側で合わせて展開すると非常に高い効果を上げます。しかし、そのタイミングや方法を間違えてしまうと「骨折り損の…」なんてことにもなりかねません。
今回は618、そしてその後を見越したKOL活用の手法をお届けします。
▼前回までの記事は
【中国EC商戦】「618」でダブルイレブンの勝敗が決まる① 2019年上半期最大のEC商戦、まもなくスタート
【中国EC商戦】「618」でダブルイレブンの勝敗が決まる② ~618で勝ち、ダブルイレブンでも勝つには消費者心理を知るべし~
なぜ「KOL」を信じるのか
中国でのKOL活用を語る前に、「なぜ中国でKOL発信が有効か」について、もう一度確認しておきましょう。
最大の理由として挙げられるのは、企業広告に対する不信感でした。
中国消費者にとって企業広告は「売りつけるための情報」という意識が強くあり、さらに2000年代に入ってから、国内大手企業の品質問題などが明るみになるなど、企業の商品や商品広告に対する信頼感は大きく低下しました。
それに比して「誰かが使ってどうだった」という生の声、すなわちクチコミは信頼度が高くなっています。
なかでも、その商品分野に一定の知見を持ち、影響力を有している人物が、実際に使ってみた感想というのは、消費者にとっては非常に貴重な情報。
これらがKOLが登場する土壌となりました。さらに90後世代や、95後世代など、ファッションや流行に敏感な新世代たちが、こうした影響力を持つKOLたちの情報を参考にしながら商品の選択、購入をおこなったことで、KOLマーケティングに火が着いたのです。
さらに2年前、2017年の618では、そうしたKOL・ライブ配信・E-コマースが融合。KOLライブコマースが展開され、大型EC商戦時におけるキャンペーンのフォーマットが作られました。
今やKOLは中国で認知度を高め、市場競争を有利に展開していく中では欠くことのできない存在となったのです。
▼参考記事
【越境EC】「618」中国EC商戦の戦い方② 中国ECはLove Live! KOLとの切れない関係
注目すべきは「95後」。なぜKOLが刺さるのか?~業界レポート・中国アパレルファッション編
では引き続き、KOL活用の注意点、効果的な展開手法を見ていきましょう。
TOPからマイクロまで。ダブルイレブンまで続く「ザワめき」を。
一言にKOLといっても、中国ではすでにWeiboフォロワー数500万人以上を抱える「TOP KOL」から、1万人程度のマイクロKOLまで、フォロワー数規模によっても大きく分かれ、下記のピラミッド型を形成しています。
また、それぞれのKOLにはコスメ(スキンケア、メイク)、ファッション、ベビーマタニティなどなど得意分野が異なります。
さらに、そうしたKOLが活動するプラットホームもかつてのWeiboからWeChat、さらには小紅書(RED)などのSNS、一直播などのライプブラットホーム、またEC大手のTaobao独自によるTaobaoライブといったECと合体しているものまで様々。
もちろん複数のプラットホームにアカウントを開設しているケースが多いのですが、こうしたそれぞれの特性を把握しての活用が必須となっています。
KOLの効果的に活用するカギとなるのが、前回お話しした「ザワめき」です。
TOP KOLを活用したからと言って、その効果が長く続く、というわけではありません。多くの場合、KOL発信をした直後はクチコミ件数が一気に大きく伸びますが、あまり長続きをせず、その後急減少するのが一般的です。
というのも、中国では常に同様のプロモーションが行われている状況。そのため、消費者はその次に現れたKOLの発信情報へ興味が移ってしまいます。
中国における効果的なプロモーションで理想的なものは、上記のピラミッドの上から下、そしてそのさらの下に存在している一般消費者まで、情報が長時間にわたって波及していく形。一過性の歓声だけではなく、歓声をザワめきに変え広げることが望ましいのです。
例えば、去年の今頃、一気に話題になった「酒粕マスク」などは、当時の中国トップ女優の投稿に、周辺のミドルクラス、マイクロKOLらが反応し、さらにソーシャルバイヤーがそれを拡散、消費者へと広がり、いわゆる爆買いを巻き起こしました。
これは偶発的に起こった事例ですが、これに近いことを意図的に起こす仕組みづくりが重要。
特に618のように、やがてやって来る別の商戦、さらにはそれを通じた通年のブランディングを行っていく上では、「一発屋」的なKOL施策ではなく、クチコミが継続して広がっていく仕掛けが不可欠といえるでしょう。
いま注目の人気KOL
こうしたなかで重要なTOP KOLの発信はザワめきの起点、起爆剤となります。
最後に、いま注目の人気KOLをピックアップしましょう。
虫虫Chonny~中国コスメ・ビューティの代表的KOL~
- プラットホーム:Weibo、一直播
- フォロワー数:390万人
- 記事平均PV数:100万+
- 中国では非常に認知度の高いKOL。Taobaoで年商1億元以上の人気美容店舗を運営。
- 2016年12月、美粧V賞中国年度TOP10KOLに選出。
- 『伊周femina』『瑞麗服飾美容』など中国の人気雑誌で美容コラムを持つ。
- 2017年11月WeiboTOP10美容KOLに選出。
李佳琦Austin~女心を離さないコスメ業界カリスマイケメンKOL~
- プラットホーム:Taobaoライブコマース
- フォロワー数:100万人
- 月間売上額:1,000万元+
- 中国TaobaoでNo.1ライブコーマスKOLと評価されて、非常にライブ配信中に商品の購買転換が高い。日別売上個数6万個の販売数記録あり。
- Taobaoだけではなく、REDやTiktokでも動画コンテンツを展開。フォロワーの粘着性が非常に高い。
- バラエティー番組に出演:《美麗俏佳人》、《我是大美人》、《火星情報局》など
Heika-Z~中国ビジネスをけん引するファッションKOL~
- プラットホーム:Taobaoライブコマース
- フォロワー数 113万
- 得意分野:ファッション、コスメ、スキンケア、食品
- 平均視聴者数:15万人
- 2016年最も商業価値の高いTaobaoKOLに選出
- 2017年度年度優秀賞受賞
- 企画ライブ購買数30,000件以上の実績あり、1時間のライブでは5,000件ほどの平均販売実績
fashion美美搭
- プラットホーム:Taobaoライブコマース
- フォロワー数 115万
- 得意分野:ファッション、コスメ、スキンケア、食品
- 平均視聴者数:20~30万人
- 淘宝ライブTOP KOL,Taobao販売実力リスト10回の中6回1位獲得
- 平均ライブ一人あたりの滞在時間は6分間以上、フォロワーの粘着性が高い
- ライブ購買オーダー数10,000件以上の実績多数
春を制する者が中国ECを制す。618~ダブルイレブンはもう始まっている
中国で効果的な認知度向上施策であるKOLプロモーション。では618、ひいてはダブルイレブンを戦うためには、何が重要なのでしょうか?
最も重要なのは「春」、この時期を制する事です。
中国の消費者の多くはEC商戦前の早い段階から情報収集を始めています。
618に関して言えば、4月末~5月末には商品情報を集め始め、5月25日から始まる618予約期に備え、お目当ての商品を決めていくのです。
そのため、勝負となるのは4月~5月24日までの「仕込期間」。ここで自社商品の情報を整理(ターゲットや訴求方法)を決め、情報発信していくことで、618シーズン(5月25日~6月18日)には、消費者に頭の中にその情報が蓄積され、期間内のプロモーションの効果を高めることに繋がります。
618やダブルイレブンなどのプロモーションは、直前になってから考える日本企業がまだまだ多いのですが、これらの商戦を勝つには4月、5月の段階、すなわち今、中国消費者の間で「ザワめき」を起こし始めている必要があります。
すなわち、今この「春」を制することが、やがてやって来る冬の成功をもたらすのです。
■2019年の618を勝ち抜くKOL戦略はこちらへ