【セミナーレポート】 すでにスタートしているW11(ダブルイレブン) 618から何が見える?(1)
6月28日、トレンドExpressでは恒例の月イチセミナーを開催。時はまさに中国ECイベント618終了直後。その動向から、来るべく11月11日の中国EC最大の祭典『W11(ダブルイレブン、中国語では「双十一」)』に向けての戦略が紹介されました。
日本企業も多く出品している中国大手ECサイト『京東(JD.com)』が開催する、年に一度の特大キャンペーン『618』。成功した企業に共通する戦略とは?これから迎えるもう一つの祭典『W11』の戦い方とは?多くの企業の注目を集めたセミナーを紹介します。
成長を続ける『618』! 売り上げ第一位の栄冠はどのECサイトに?
そもそも、『618』とは何か?簡単におさらいしていきます。
『618』は6月18日のことで、中国EC大手(第2位)である、京東の設立記念日。一番の祭典『W11』に次ぐEC大商戦です。2017年度は、京東だけで約2兆円の取引額を観測しました。『W11』と同様に、他の各ECプラットフォームもこれに参戦し、年々規模を大きくしています。
今年の動向で一番押さえておきたいポイントは、双十一などECの売上では天猫が圧倒的に強いイメージがありましたが、618は「京東の日」、売り上げはやはり京東が堂々の第1位という点です。
総売り上げは約5兆円、その内2.7兆円が京東と、つまり60%の売上が京東ということになります。最大のライバル天猫は、この時点では詳細な金額を発表していませんが、少なくともこの2社で80%は占めているだろうと予測されます。
つまり、各プラットフォームの競争が激化するも、やはり2大プラットフォームの存在が大きい、という現状が浮き彫りにされました。
第3位のダークホース!『拼多多』って何者?
今回の618で第3位となった『拼多多』、アリババが脅威を感じているとまで言われている、WeChatと連携したECプラットフォームです。
テンセントの出資も入り、わずか2年間で1億人以上のユーザーを獲得して加速度的に成長しています。
従来のECサイトと比較すると、低価格帯のローカル企業や無名の会社の商品を扱い、ターゲット層も地方都市に住む低所得者に向いており、そこからの支持を集めています。
これからの日本企業が、ターゲットをどこに絞るか、といったところで、このプラットフォームの存在が大きくなっていくかもしれません。
各プラットフォームの動向
昨年2017年を「ライブコマース元年」と位置付けるのであれば、今年の618では京東と天猫がライブコマースに注力したキャンペーンを行なっていました。京東は618人のKOLによるライブ配信を敢行し、大きな話題を呼びました。また、天猫はオフライン施策にも力を入れ、70以上のショッピングモール、10万以上の実店舗と連携し、のべ7000万人がオフラインのイベントに参加したと言われています。
各プラットフォームの施策内容に多少の差こそあれ、
- いかに面白い企画でプラットフォームに消費者を呼び込むか?
- いかに割引をして購入導線につなげるか?
を重視したところが大きな共通点です。ここから、ユーザーは『お気に入りの商品がどこで一番安く買えるか?』を吟味していく流れになりました。
618は6月1日から20日間と長いセール期間を実施していたために、消費者からは安い組み合わせを探してECサイトを巡ったり、お金を使うことに疲弊した、といった口コミも見られます。消費動向としては80后、90后の消費とともに高付加価値商品の売上が拡大、より生活品質(QOL)を良くしたいという欲求が垣間見えました。
またワールドカップ開催に向けてか、大型テレビの売上が350%成長したことや、父の日ギフトの消費が目立ったことから、618は「季節イベント」に訴求したキャンペーンの有効性を感じられる結果となりました。
京東は2017年の618からW11へと順調に規模を拡大させており、次のW11でも大きな期待が寄せられています。
618参戦企業から学ぶ教訓とは
今回の618において、前年比240%や350%など、大きく売上を伸ばした企業に共通してみられた特徴としては、セール期間開始の6月1日に一度売上が伸び、その後停滞期間を経て、本番期の16日から18日に大きく販売が加速した、という形です。
これらの企業は何を仕掛けたのでしょうか?
結論から言えば、商戦期前からの継続的なブランディングで認知度を高めたのです。
618やW11といったキャンペーン期間は、「お気に入りの商品を安く買う」ことが消費者の最大の目的です。そのため、その前から継続的なブランディングを行い、まず商品が消費者に知れ渡ること、そして「いつか買いたい」という欲求を蓄積させておくこと、この2つが重要になってきます。その意義としては
- キャンペーン時に消費者からの購買が最大化される
- プラットフォーム側のキャンペーンに乗せてもらいやすい
という2つが挙げられます。
天猫や京東などのモール側も独自のキャンペーンを行なっており、人気商品など売れそうな商品はモール側も消費者に訴求しやすくなります。
繰り返しますが、今回上手くいった会社はみな上記のように、6月1日のモールがキャンペーンを打ち出した時に購買が促進され、広告や割引が活発化する本番期に再燃しています。
モール依存となることは危険ではありますが、出店しているモールでの立ち位置で売上が左右されるのが現状です。今回上手くいった会社は、このモール側の施策にうまく乗れたことも大きな一因でした。
重要なのは、商戦期を取り入れつつ継続的にブランディングを行なうことです。例えば今回の618で売上が伸びなくても、ここで認知を得ていたために次のW11で跳ね上がる可能性があるということ。そのためにも継続的なブランディングが必要なのです。
次回はこれらを踏まえたW11への心構えをご紹介します。