【ダブルイレブン】 W11攻略に必要なのは「数学」と「読解力」 増え続ける割引キャンペーンに消費者たちは……。
中国EC商戦のマーケティング手法として、今年の618でも多用されたのが「紅包」。WeChatでは春節や友人同士で現金を送りあう「ご祝儀袋」機能として利用されていますが、EC商戦では消費者に対して特定の金額のサービスを行う、マーケティングの一環として活用されています。
本来、消費者にとってはお得感の増すサービスであるはずなのですが、昨年のW11に関するクチコミを見てみると、なにやら不満があるようです…。今回はW11に関する消費者の悩みについて見ていきましょう。
「W11数学問題」。あなたは解けますか?
昨年のW11シーズン、あるKOLの発した「数学の問題」が話題になりました。それは…
「W11にT-Mallで小売価格1699元の服を買いました。“サービス券30元”、“複数店舗利用サービス200元で20元OFF”、店舗サービス“999元購入しさらに指定商品購入で300元OFF”のサービスを利用しました。では、この服の最終購入価格はいくらになったでしょう?」
この書き込みに対して、「大学入試の数学より難しい」、「数学オリンピックの問題?」などなど、ネットユーザーからは共感の声が続々。
W11時期は各店舗、総力を挙げてのキャンペーンを展開しているのですが、それが近年複雑になりすぎ、中国の消費者たちが混乱しているのです。ネット上では「数学と読解力の無い人はW11にはふさわしくない!」という記事まで登場する始末です。
増え続ける中国SNSの「紅包」。お得感につながってる?
前述したように、「紅包」は、消費者にとってはよりお得に購入できるサービス券。店舗側としても、消費者を店舗に呼び込むため、T-Mallの行うキャンペーンに参加したり、自社のツールを使ったりしながら、消費者にばらまいていきます。
ちなみに2017年W11でT-Mallが用意した紅包の総額は「2.5億元」にも上ると言われており、それを目当てに多くの消費者がAPPなどを利用して数々のイベントに参加していました。
しかし、その種類を見ると「火炬紅包」、「明星密令(アイドルシークレットミッション)紅包」、「品牌(ブランド)紅包」、「捉猫猫紅包」、「捜索紅包」など、意外に多いことに気が付きます。
これらの紅包は、それぞれ異なるゲームやキャンペーンによって手にすることができ、また紅包に入れらている金額も様々。そのため消費者も紅包ゲットに心を燃やすのです。
さらにブランドは単独で割引キャンペーンなどを実施。紅包やキャンペーンは併せて使うことができるため、掛け算方式で複雑さが増していきます。
結局、2017年のW11が終了した後、徐々に冷静さを取り戻した消費者はふと思ったようです。
「果たして自分は本当にお得に買えたのか?」
と。
T-Mallや各店舗のキャンペーンを複数併せて購入したものの、果たしてどのくらいお得になり、どのくらいの割引で買えたのか、誰もはっきりとわからない状態に陥った様子が、Weiboなど中国SNS上で多く見られました。
先に紹介した、W11の商品をどのくらいの割引率で購入していたかについても、「おそらくそのくらい」という消費者の感覚値や、購入時に確認した店舗上の価格(割引券を使う前)だったりと、完全に「うろ覚え」状態であったと予測できます。
【グラフ】2017年W11「購入商品割引率」に関するクチコミ
出所:株式会社トレンドExpress調べ
ちなみにある報道では、W11終了後に、塾への応募が増加したとか。どうやら「来年のW11に向けて、サービスを計算できるように数学を勉強しないと!」ということのようです…。
「みんな大好きW11」ってホント?
こうしたW11のサービス状況。中国トレンドExpressでは、中国消費者の本音を知るため、W11に関するクチコミのポジネガ調査も行いました。
【グラフ】2017年W11に関するクチコミのポジ・ネガ比率
出所:株式会社トレンドExpress調べ
この結果を見てみると、実に6割以上の消費者が2017年のW11に関して「ネガティブ」なクチコミを発していることがわかります。
その多くが「サービスのわかりにくさ」に関して。なかには「ごちゃごちゃした割引システムより、誠意の部分を多くしてくれ!」といったものまで。
日本では大々的に報道され、「中国の人はW11で喜んで買っている」という印象がありますが、実際はその複雑な割引サービスやキャンペーンに若干お疲れのご様子。
しかしそれでいて「来年のW11」に向けて闘志を燃やすクチコミも少なくありません。
ある上海の消費者に話を聞いてみましたが「“W11だから買わないといけない”みたいな、何かプレッシャーがある」と話してくれました。
「言いたいことは山ほどある。しかし買わなきゃいけない。なぜならW11だから!」。それが中国消費者の本音なのかもしれません。