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【中国コンテンツBiz】 ピンクの子豚が席巻中~思わぬキャラクターの大ヒット

今、中国で最も影響力があるキャラクターといえば? ミッキーでもキティちゃんでもなく、ある「ピンクの子豚」が中国の若者たちを席巻しています。見た目はドライヤーにも見えなくもないその姿、なにかのんびりとしたストーリー展開。

今回は、ネットで拡散され、今やナイキやユニクロといった世界的なブランドをも巻き込んだアニメキャラクターとその拡散の背景について探っていきます。

実はイギリス発。上陸3年後の大ブーム

人気となったのは「ペッパピッグ」というイギリスの幼稚園向けアニメシリーズ。

イギリスでは2004年から放送が始まった、1話5分間のショートストーリー。主人公ペッパという名前のピンクの子豚(女の子)と、彼女の家族や友達との日常を描いた、ほのぼのアニメです。

ペッパピッグを配信する動画サイト

ここだけ聞くと「あぁ、子どもの頃に見たアニメが、視聴者は大人になったころブームが再燃するやつね」と思うかもしれません。

しかし、今の大人(大学生、ホワイトカラー)は幼少期に同作品を見ることはありませんでした。なぜなら、同作品の中国での放送は2015年のテレビ放送が初。つまり、わずか3年前に中国にやってきた新しいアニメ作品なので、現在そのグッズを買い求めている大人たちは、まさに「大人になってからファンになった」のです。

どのくらい人気が出たかといえば、2015年に中国の三大動画プラットフォーム―「愛奇芸」、「優酷」と「土豆網」で提供されましたが、1年間で視聴回数は100億回超、累計視聴回数は450億回以上という成果をみせています。

やがてその人気を受けて、キャラクターグッズなどの販売が広がっていきました。ターゲットは主に乳幼児向けで、おもちゃの時計やシールなど、比較的容易に購入できるものでした。

ところが、子供がこうしたキャラクターにはしゃぐのは理解できますが、実際中心になっているのはいわゆる「90後」、すなわち「もういい大人」たちなのです。

自称「社会人」の中国の若者たちは「ペッパピッグ」のシールを腕にいっぱい貼ったり、幼児向けのおもちゃの腕時計をつけたり…。さらには「社会人の標準装備はペッパピッグのシール、腕時計、小銭入れ」や「ペッパピッグを身に着ければ、今日私も社会人デビュー」などといったスローガンがネット上で溢れるまでになっています。

名だたる企業もペッパピッグとコラボ

アイドルやKOL、90~95後の若者が、前述の「装備」を身に着けて合言葉をかわす…。その状況を見て、やはり企業も動きました。「ペッパピッグ」マーケティングが展開されたのです。

その代表的な事例が日本のファストファッションブランド「ユニクロ」。

同社では子供向けペッパピッグパジャマを売り出しましたが、Weibo上で合言葉「ペッパピッグを身に着ければ、〇〇〇(消費者が自由に入れる)」をつぶやいたら抽選で20人にペッパピッグのぬいぐるみをプレゼント、というイベントを展開しました。

結果、SNS上の書き込みが急速に増加し、それ以前の他のキャラクターとのコラボ商品を超える売り上げとなりました。

またユニクロだけではなく、ナイキ、グッチ、ルイヴィトンといった世界的なブランドまでもペッパピッグをデザインに取り込んだ商品をラインナップ。

火をつけたのは動画サイト→SNSで拡散へ

ペッパピッグが爆発的な拡散を見せたのは、やはりネットの力であり、そのネットのブームを担っているのは80後、90後、95後と呼ばれる中国の新しい消費者たちです。

前述のように同作品はもともと幼児向けアニメとして認知を広げていったのですが、若者に広がるきっかけとなったのは中国の動画サイト「bilibili動画」で同作品の「重慶方言バージョン」がアップされたことです。

これは消費者が自身でアテレコをした動画でしたが、すぐ再生回数100万回を超え、これを見たほかのネットユーザーは広東語、四川語、東北語、上海語など、いろんな方言バージョンを作りアップしていきました。

その中心が若者たちです。

彼らはそこからTikTok、Kuaishou(快手※)など動画ソーシャルアプリで大量のパロディ作品をアップロード、より人気を拡大させていったのです。

ご存知のように中国の80~95後は購買力があり、流行に敏感、ネットにも影響されながら個性や面白さを追求します。

その彼らはネット上で拡散させるペッパピッグに、「流行」を感じ、かつ今まで見たことのない「かわいさ」に気づき、「オシャレ」になっていったようです。

ペッパピッグとのコラボ商品を紹介するユニクロのWeibo公式アカウント

ユニクロの商品に対する書き込み。「なんで大人用が出ないの?」「出たら絶対買う」といった言葉が見える。

最終的に、「ペッパピッグ」のライセンスを持つイギリスのEntertainment One(eOne)は2017年上半期、中国でのライセンス商品売上がなんと前年同時期比で「700%増」という驚異的な数値を見せました。

小さなピンクの子豚は、中国大陸で消費者、世界のトップブランドを巻き込んだ巨大コンテンツへと変身したのです。

※Kuaishou(快手):ユーザ都市は2~3級都市、および農村部。

参考:
社交网络捧红小猪佩奇 品牌方要在中国开主题游乐场 (出所:中華網) 中国語