オフライン消費から新たな旅行モデルまで 2021年の労働節を見る
2021年も5月1日の労働節、メーデー休暇を迎えた。
前年は新型コロナの外出規制が緩和されたばかりという事もあったため、人出・消費ともに落ち込みが見られた。
では、一定の落ち着きを見せている2021年の労働節はどうだったのだろうか? 公開されている情報からその様子を見てみよう。
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▼2020年の労働節の模様は
中国Afterコロナの動向は? 初の大型連休から考える
2020年を大きく超える2021年労働節観光
「携程(C-Trip)」と新華社の経済メディア「新華財経」が共同で発表した『2021“五一”旅行大数据报告』では労働節休暇中の旅行予約は2020年同期比で270%増。2019年比でも30%以上の伸びが見えているという。
また日本でも報道されているデータとして、今年の中国労働節(メーデー)の人出は、5月5日の夜時点で、観光に出かけた延べ人数は2.3億人、全国の国内観光収入は1132.3億元と発表されている。
新型コロナウイルスに見舞われた2020年は国内旅行を楽しんだ消費者は1.15億人、国内観光収入も475.6億元。
また2019年の休暇は4日間であったが、旅行人数1.95億人、観光収入1176.7億元であった。
これらの数字を比較してみると、人数においては新型コロナ禍以前を上回り、観光収入においては新型コロナ以前には達していないが、徐々にその規模に近づいている様にも見える。
ただ客単価の面ではやはり2019年のレベルには達しておらず、観光に対する消費に関しては完全には回復しきっていないようにも見える。
こうした旅行消費データに関しては、国慶節の観光状況などを合わせて継続的に見ていく必要があるだろう。
上海ではオフラインショッピングイベントも
中国最大の経済都市である上海では、4月30日から5月4日までの期間中、上海におけるオフライン消費は196.5億元。2020年の同時期に比べ30.4%の伸び、さらに新型コロナウイルスに見舞われる前の2019年の同時期比でも9.6%の増加を見せている。
特に上海市は経済都市であるだけでなく、国内では有数の観光地でもあり、上記期間中に延べ447万人が上海市を訪れ、68.5億元のオフライン消費を行っていた。
上海外からの消費金額は期間中のオフライン消費の34.9%を占めており、労働節観光の恩恵を浴びていたことになる。
この労働節、上海市では地元メディアと地元の小売業大手である百聯集団とのタイアップで、「55購物節」と呼ばれる「ライブ×リアル店舗」のショッピングイベントを展開した。
5月5日に市内各所のショッピングモール、百貨店とラジオ・オンラインライブ会場をつなぎ、10時間に渡るライブを配信。
各店舗のキャンペーンなどをライブで紹介していくというもので、主にはオフライン店舗での消費を促すというものであった。
ライブイベントがオフライン店舗と共同でキャンペーンを展開している点は興味深い。
おそらくは新型コロナウイルスによって少なからぬ打撃を受けたオフライン店舗の回復を加速させようという施策の一環と考えられるが、同時に近年では上海を含めた大都市で、Z世代を中心としてオフライン消費がトレンド化している、いわばオフライン消費が再評価されている一つの現象とも考えることができる。
そのオフライン消費の復権としては2020年から広がっているコスメセレクトショップや「美しい書店」、「カフェ」などが一例として挙げられる。
そこにはもちろん新型コロナ対策の巣ごもり生活から解放された、リベンジ消費という一面もあるだろうが、そうした巣ごもり生活の中で、オフライン消費でしか得られない充実感が再確認されたという点もあるように見受けられる。
ECプラットホームの台頭によりオンラインに押されてきたオフライン店舗であるが、こうした「ライブ×オフライン店舗」のコラボレーションは、オフライン店舗の巻き返し手法となるのか注目される。
中国でもキャンプ熱?若者を中心に浸透する新たな旅
もう一つ注目しておきたいのが、若者の新たな旅行モデルである。
中国では近年、若いホワイトカラー層を中心にアウトドアが注目されているのだが、その中でも「ハイエンドキャンプ」といったものが人気になりつつある。
もともと観光というと高級ホテルに泊まる傾向が強かった中国消費者であったが、「露営」とよばれる草原などでのキャンプ、特にグランピングに近いハイエンドキャンプの投稿が小紅書(RED)上でも見られるようになっている。
主にはキャンプグッズの紹介や経験の共有だが、その中には「1万4000元のテント」などもあるとの報道もある。
これは若者世代が従来とは異なる、個性的な旅を求めていること、その方向性として普段のオフィス街から離れ、大自然に囲まれることでリラックスするという事をステイタスとして見始めていると考えられる。
徐々に回復傾向にある中国の観光産業。その中で生まれる新たな動き。
やがて復活するであろう訪日観光のためにも、その動きは注視しておきたいところだ。