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新型コロナ後の国慶節 海外に行けない大型連休の行方は?

ついにやってきた中国の大型連休・国慶節

しかし今年は日本に大挙押し寄せる中国からの観光客の姿は見えない。新型コロナウイルスによって、中国消費者も海外旅行をあきらめざるを得ないのである。

では、今年の国慶節をどのように過ごしたのだろうか?

期間中、そして終了直後のデータから、例年とは異なる国慶節を見てみよう。

気になる人出と消費は?

今年の中国国慶節は普段とは状況が異なった。

10月1日は新中国建国の日であるが、今年は「陰暦八月十五」、すなわち中秋節が重なり、お祭りムードに花を添えた形となった。

 

そして同時に、新型コロナウイルス流行後、初の8日間大型連休となったことである。

 

この特殊な状況で、中国の消費者はどのように連休を楽しんだのだろうか?

 

目下の中国の報道を見てみると、10月4日の時点で4.4億人、8日まででのべ6.37億人が帰省や観光という目的で外出しているという。さらに旅行収入も4665.6億元を上げている。

 

完全には回復とまでは言えないようで、2019年は7日間でのべ7.82億人、うち海外旅行へ出かけた消費者は700万人。国内旅行収入6497.1億元。

2020年は人数においては前年の8割弱、旅行収入においては前年の7割弱という状態だったことが見て取れる。

 

結果としては昨年比では下回る結果となったが、それでもコロナの影響を感じさせない勢いだ。

 

個別の状況にも目を向けてみよう。気になるのはこの世界的な新型コロナウイルス禍のスタート地点となった湖北省である。

 

EC大手の京東(JD.com)の発表によると、10月6日時点で湖北省の消費は前年同期比で30%増、また他都市から湖北省特産品のオーダーは同じく60%という伸び。大きな感染地となった湖北省でもその消費が例年並みに戻りつつあり、また全国的に湖北省の物産を購入して“復興”を応援しようと動きがあるように見られ、またそこにお金を使おうという心の余裕が生まれてきたように見える。

 

また、注目は「中国のハワイ」ともいわれる海南島。

 

以前紹介したように、同島では2011年から施行されていた「離島免税政策」の免税上限が7月より大きく緩和され、中国消費者は国内旅行でも同島内の免税店で10万元(約150万円)まで免税ショッピングが楽しめるようになっている。

その中心地である三亜免税城では5日間で5.3億元と昨年同期比136.9%の伸びを見せた。

 

これだけ見れば、この国慶節でも中国の消費の戻りを感じさせる。

ついに主役の座に躍り出た95後。その旅の方法は?

では今年の国慶節にどういった変化があったのだろうか。

 

データを見る限り、一番大きな変化は「主役」である。

アリババグループの旅行予約アプリ「飛猪」が10月4日までのデータをまとめたところ、今年の旅行者の中心が「95後」、いわゆるZ世代だったことが見て取れる。

【グラフ】2020年国慶節旅行者年齢比率

出所:飛猪の発表したデータ報道をもとに中国トレンドExpressにて作成

このデータによれば95後および00後のZ世代が延べ2億人以上が移動した計算になる。

 

興味深いのは別にC-Tripが公表した今年の特徴を見ると「錯峰出游」者の主力が95後世代となっている点である。

「錯峰」とはラッシュアワーを避けることを意味し、「錯峰出游」とはまさに長期休暇がスタートしたばかりのラッシュを避け、人手が落ち着いたころを見計らって、数日遅れで出発することである。

 

こうした95後たちは、国慶節における最初の3日程度に残業して残業代を稼ぎ(国定長期休暇時の出勤は通常の3倍の日当)、連休の中ごろから旅行に出かける。

なぜなら、飛行機などのチケット代が高騰するのは10月1日、2日であり、4日になると価格が下がり、30%オフのチケットも現れるという。

 

さらに広州、深圳、南寧、太源といった都市は比較的「穴場」であり、4日、5日あたりはホテルの宿泊費も通常よりも25%程度の上昇で抑えられる(国慶節中は通常の倍といったケースも)のである。

 

こうした世代、アクティブであるのと同時に、SNSとともに成長した世代で、それを活用した情報収集にも長けている。

そのため、多くのデータを集め「お得に国慶節を楽しむ」すべを分析してると考えられる。また同時に「周りと同じように行動して大変な思いをするよりも、自分だけズラして楽しんだほうがいい」という、いい意味でのマイペース差が表れているといえる。

気になる「感染状況」は?

ただ、日本側が気になるのは「本当にそんなに移動して、コロナの感染は大丈夫?」という部分であろう。

筆者は疫学の専門ではないので、本当に中国が新型コロナを抑え込んだのかを断言することはできないが、中国の友人と話をしていると、「中国の新型コロナは“終息”した」という意識が強い様子が感じられる。WeChatで話をしていても「日本はなぜ今も抑え込めないんだ?」と逆に心配されることも多い。

 

ここに日中の物事の意識差が見えて興味深い。

日本では完全に撲滅することは不可能として「Withコロナ」、新型コロナウイルスがあることを前提に、予防を意識した生活を目指している。そのため9月の連休中でも繰り返し「予防」を訴え、中には観光刺激施策に疑問を呈する人もいる。

だが、中国では「Afterコロナ」、すなわち新型コロナはもう終わったこと、という意識が見え隠れする。

 

その背景にあるのは徹底した隔離対策、IT技術を多用した1人1人の行動管理、そしてそれらをもとに「我々は抑え込んだ勝利者だ」という政治宣伝による自信といったもの。

またメディア報道でも「感染防止」に気を付けることなどが呼び掛けられている。

もちろん、国慶節後の中国の感染状況を見てみないと明確な判断はできないところだが、少なくとも多くの人が怖がらずに旅行ができる状況と認識しているのだろう。

 

あとは気になるインバウンドの回復だが、これはやはり日本側の回復状況を見て、となるだろう。

一刻も早い日本での収束を願うばかりである。