今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.8 ~商品理解のためのBaidu活用法~
SNS上の発信情報と“せめぎ合い”をしながらお目当ての商品を見つけていく中国の消費者。しかし見つけたからといってすぐに「購入」ともならない。中国消費者が購入を決断するためには、より深く、正しく商品を理解する必要があるのである。
では中国の消費者が目に留まった商品のどんな内容を、どのようにして収集し、分析し、商品への理解を深めていくのか。
今回は中国消費者の商品理解方法を、日本でも知られた検索サイトの使い方にスポットを当ててみていこう。
▼前回の記事
今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.7 ~中国消費者の心に“種”を届けるには~
SNSでは使用感。でも気になるのはそれを作っている「存在」のこと
中国の消費者が気になる商品の情報を取得する際に行う、最も手軽な手法がアプリでの検索である。
これはすでに説明する必要もない情報であるが、小紅書(RED)による指名検索→投稿の閲覧、投稿へのコメントチェックによって、その商品の特性や使用感を深める。
例えば化粧水に関してでいえば「自分の肌質と近い投稿者を探す」(上海在住、20代女性)というように、自身と共通の悩みを有している投稿を重点的にチェックし、商品の使用状況を把握するのである。
ただ、それ以外に活用するのは、「Baidu(百度)」による検索。
気になった商品やブランドの情報を得るために「ネット検索」をすることは日本の消費者でもすでに習慣となっているが、中国でも同様の習慣が根付いている。
しかし中国で話を聴いてみると、より深い情報を調べている様子である。
まずチェックするのは、そのブランドや企業がホームページを持っているかどうか、であり、その点は日本の消費者と変わらない。
きちんとした企業ホームページやブランドサイトを有している→体制を整えて生産、販売を行ている企業という認識である。
Baiduでは日本企業の日本国内で解説されているサイトも検索上に表示されるため、中国に法人を持っておらず、日本語のサイトしかもっていない場合でも、中国市場を考えるのであればBaidu検索によって自社サイトやブランドサイトが表示されるための施策は必須だ。
しかし、近年ホームページの開設が厳格化した中国であっても、ホームページ“だけ”で消費者を信用させることは難しく、消費者のなかには、企業情報を閲覧できる公共のサイト「国家企業信用公示系統」を利用するといった猛者もいるのである。
これは中国の旧工商局、現在の国家市場監督管理総局が運営しているサイトで、中国国内で法人登録されている企業はすべて検索することができる。
そのサイト上では、法人の性質(内資、外商独資、中外合資など)や資本金、株主、代表者名といった企業情報のほか、「行政処罰」の経歴なども閲覧可能だ。
また現在は「企査査」といった、上記と同様の企業情報が閲覧できるAPPも登場しており、その企業の実在性を確認することが可能だ。
すでに名前の知れた企業であればそこまでする必要もないが、特に近年は化粧品やサプリ、家電、生活雑貨など、あらゆるセグメントで中国国内ブランド、欧米や日本、韓国ブランド、さらには中国起業家が海外で立ち上げた中国向けブランドなどが乱立し、中国市場に参入している状況。
小紅書などで紹介されている商品であっても、大手有名ブランド以外は「どういった素性なのか」を確かめなければ安心はできない、というのである。
中国ローカル企業の実在性や、まだ知名度の低い外国ブランドが中国に現地法人を有しているかどうかなどまでチェックする、という消費者も存在しているのである。
もっとも気になるのは「何が入っているのかな」
Baidu検索を行うのは企業情報だけではない。お目当ての消費を「より深く調べる」という目的でも行われる。
特に直接肌に塗るスキンケア化粧品や服用するサプリメント、そして子供向けの商品に対しては、通常より高いレベルの安全性を求めるのは周知の事実。
その安全性において消費者がもっとも気にするのは「どういった成分が含まれているか」である。中国ではいまだ使用を禁止もしくは規制されている商品を使用、基準値以上の量を使用して生産されるケースもあり、毎年3月15日の消費者権益日の一斉摘発などでもそうした企業の状況が報道される。
そうした不安要素を無意識のうちに感じる中国の消費者、その不安を解消するのがBaiduなどを活用した成分検索である。
小紅書(RED)でも商品紹介において成分などが含まれていることが多いのもこうした事情によるが、そこで知りえた成分をBaiduで検索、どういった効果をもつ成分なのかを調べるのである。
この際、中国消費者が気にするのは、成分についての医師や研究者などの専門家による文章、メディアによる報道記事といった、広告とは異なる、権威のある立場からの解説である。
特に成分のデメリット(副作用)が気になる消費者にしてみれば、メーカーとの関係を持たない中立の立場であり、同時に専門的な知識を有する専門家による成分に関しての解説があることは、その商品への評価を高めることにもつながる。
また専門家も自身の専門性を高めるために、ブログやSNS、時にはメディア取材などによって一般消費財に使われる成分についての情報発信をしているケースも少なくない。
代表的な存在としては、成分検査のプロとしてWeiboやDouyinで情報発信を行っている「魏老爸」などが上げられるだろう。
また正規のメディアによる報道、特に商品ではなく、商品に使用されている成分の効果効能、副作用などに関連した報道も、消費者にとってはチェック対象だ。
近年の日本では中国消費者SNS依存度が広く紹介され、企業もSNSを中心としたPR施策を練っている。
しかし、消費者により高い安全性、信頼感を与えるにはSNS上の情報だけでは不十分。商品への理解を深める過程においてはBaiduで検索できるオフィシャルな情報チャネルも活用している。
SNS一辺倒に偏るのではなく、商品だけの情報に限らない幅広い情報を、中国消費者が活用している複数の情報チャネルを通じた情報を発信していくことで、商品への理解を深め、次の購入検討フェースへと進ませることができる。マルチチャネル戦略の構築が必要不可欠なのである。