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今ドキ中国消費者解体新書 「カスタマージャーニー」で見える中国市場攻略法 Vol.1「カスタマージャーニーマップ」とはいったい?

中国市場で商品販売を計画していく中で、避けては通れないのが消費者への理解と分析である。そんな消費者への対策をまとめた施策として注目されているのが「カスタマージャーニーマップ」。この手法は中国市場を攻略する上でも極めて重要、成功のカギと言えるべきものである。

しかし、日本とは異なる中国市場、距離・言葉の壁など数多くの障壁により、そこで生活している消費者を身近に感じることは極めて難しい。

本連載は、そんな中国市場に挑む日本企業のために、中国市場向けのカスタマージャーニーマップ作成方法、そしてそのフェーズごとの中国消費者特有の購買心理までも深掘りしながら、中国消費者の攻略法を作ろうというものである。

 

第1回となる今回は「そもそもカスタマージャーニーマップとは何か?」を改めて整理する。

カスタマージャーニーとは何ぞや?

まずは「カスタマージャーニー」というものについて考えていこう。

カスタマージャーニーとは自社がターゲットとしている消費者が、自社の商品に関する情報を初めて目にし、その後買うかどうか考え、いろいろな情報を収集・比較し、最終的に購入するまでを可視化すること。

そのスタート(認知)からゴール(購入)までの過程が、消費者が旅をしていることに似ていることから「Journey」と呼ばれるのである。

 

一例をあげよう。

 

1人の女性がファッション誌を読んでいたとしよう。そこには自社の商品、例えばハンドバッグが紹介されている。それを見たその女性は初めてその商品を知ることになる。これがいわゆる「認知」フェーズだ。

その女性は、商品のことを知りたくなりネットで調べ始める。「どこで売られているのか」、「小売価格は?」、「最新のモデルは?」、「どうコーディネートすればいいか?」、「どんなシーンで使えそうか」……などなど。

場合によっては売られている店を見に行き、直接手に取ってみるかもしれない。その際にはさらに様々な会話を店頭スタッフと交わすかもしれない。

 

つまり商品への「興味・関心」が高まり、「商品理解」を深めるフェーズ。

 

そしてイメージを膨らませた消費者は考える。「どこが一番安い?」、「店に行って品切れだとイヤだな…」などなどの「検討」を経て、「購入」を決心、商品を手に入れる…という流れである。

 

この流れを細かく、深く分析していくことがカスタマージャーニー分析の一連の作業となる。

どのようにカスタマージャーニーを考えるのか~マップ化してみよう

「なんだ、それなら簡単」と思われるかもしれない。しかし、単に行動を洗い出しただけではカスタマージャーニーを理解したとは言えない。

 

まずはターゲット消費者をイメージする。

イメージと言っても、単純に「20代女性」といった大きなものではない。

より細かく、

  • 年齢
  • どんな職業のどんなポジションについているのか
  • 収入はどのくらいか
  • どんな性格なのか
  • 独身か既婚か
  • 子供はいるのか
  • 持ち家か賃貸か(毎月の家に関わる出費も)
  • 趣味
  • 平日の時間の過ごし方、休日の時間の過ごし方

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まさに、そのターゲット消費者が目の前に立っている様子まで想像し、設定していく必要がある。いわゆる「ペルソナ設定」である。

これが、今後始まっていくカスタマージャーニーを考える起点となっていく。

 

そして、その消費者になったつもりで、購入に行動を細かく洗い出し、さらにそれをグルーピングしていくのだが、その際に重要なのは、単純に消費者の「行動」を時系列に沿って並べるだけではない、ということだ。

 

人とは感情の生き物である。行動を起こす前や行動中、行動後には必ず何らかの「心の動き」が現れる。その心の動きまでを想像していく必要があり、さらに、その消費者行動や感情変化に「適したメーカー側の行動」(各フェーズの消費者とどのように接点を持つか)を合わせて紙に書きこんでいく。

 

こうして出来上がったものを「カスタマージャーニーマップ」と呼ぶ。

【参考】カスタマージャーニーマップの作り方の流れ

作れるか否かが中国市場攻略のカギを握る

なぜこうした整理が必要なのか?

それは消費に関する環境が以前よりも複雑化していることにある。

 

消費者と商品の最初の接点も、以前はテレビ、雑誌、店頭広告などがメインだった。しかしそこにインターネット広告が加わり、さらに現在はSNSを通じてあらゆる情報が飛び交う世の中となっている。

 

同時にその内容も豊富になっている。単純な価格やスペックという情報だけでなく、実際の使用感をリアルタイムで、かつ距離の壁を超えて収集することができる。

 

こうした環境が変われば、その情報を受ける消費者の感情変化も以前に比べ複雑になっていく。メーカー側から見れば、それぞれのタイミングで、そうした複雑化した消費者感情に対して「的確な」メッセージ、「的確な」アクションを発していく必要に迫られるというわけだ。

 

一昔のように、「お客様はみな同じ」ではない。思いついたペルソナの数、それ以上の種類の消費者が現実には存在している。

 

そして忘れてはならないのは、それを「中国の消費者」をイメージして行っていかねばならない、ということである。

日本とは全く異なる社会環境、価値観を持った消費者の姿を想像し、マップを作製する必要がある。ましてや、日本以上に多種多様なチャネルで膨大な量の情報が飛び交う地。

マップ制作の難易度は日本以上と言えるだろう。

 

だが、それは同時に中国市場に対するカスタマージャーニーを正しく設定し得るかどうかで、中国事業の成否を分けるとも言える。中国市場を本気で目指す企業にとっては避けて通れぬもの。その設定のためにも、本連載ではこれから中国消費者を深く分析していく。

次回(8月9日予定)は「中国向けカスタマージャーニーマップ設定」の心得、コツやツボを分析していこう。