【中国人訪日観光】デザイン意識の変化が人気スポットに影響?シンプルデザインの慈照寺銀閣の人気上昇中―「行った」ランキングから
トレンドExpressが毎週行っている中国ソーシャルメディアにおける日本関連書き込み総件数ランキング。その中から「行った」「食べた」「〇〇したい」などインバウンドに関連したランキングをピックアップし、注目のキーワードを分析します。
今回は4月17日〜23日「行った」ランキングから、人気の観光地・京都で起こったランキング変化を分析します。
(さらに多くの中国人気商品情報が必要な方は有料記事が読めるデモアカウント登録へ)
まずランキングトップ10はこちら。
今週の中国人気訪日クチコミ:「慈照寺銀閣」
今回注目するのは、行ったランキングであの鹿苑寺金閣を抜いた、「慈照寺銀閣」です。
京都観光は中国人観光客に大人気。世界遺産や国宝級の名所もたくさんあり、美味しい料理も楽しめるからです。
トレンドViewerの「行った」ランキングにも数多くのスポットがランクインしていますが、最近、意外な変化が見られました。
慈照寺銀閣寺が、「行った」ランキングで鹿苑寺金閣を抜いたのです。
金ピカでもなく、見た目にも地味な印象が強い慈照寺銀閣寺、何が中国人観光客を惹き付けたのでしょう。
日本を代表する侘び寂びの世界
私たち日本人が「銀閣寺」と呼んで親しんでいる慈照寺銀閣。
室町幕府8代将軍の足利義政が、北山山荘(鹿苑寺金閣)を参考に建立したといわれています。京都の侘び寂びを象徴する建築や、色彩を抑えた境内が静かな気品を感じさせます。
銀閣へ向かう総門から中門まで続く50mほどの参道「銀閣寺垣」は、両脇に4mほどの竹垣が設けられており、細長い空間を歩いていると、自然と心が落ち着きます。
銀閣寺を代表する「観音殿(銀閣)」は二層構造の建築。初層は「心空殿」と呼ばれる住宅風様式、上層は「潮音閣」と呼ばれる禅宗様の仏堂で、金閣、飛雲閣(西本願寺)と共に京の三閣と呼ばれる国宝です。
華やか⇒シンプルに。変わる中国の好み
中国人と聞けば、金や赤など、はっきりとした華やかな色彩を好む印象が強いのですが、ここ最近、特に若者の間でこれまでの美観、すなわち「カッコよさ」に対する感覚が変わってきています。
ド派手なものよりも、シンプルで落ち着いたデザインを好むようになってきているのですが、その中のひとつ、「禅」の思想も若者世代を中心に受け入れられ、浸透しています。
「禅」は主には大手企業の経営層など、年配層から徐々に広がっていましたが、アップル社のスティーブ・ジョブズが傾倒していたことから、若手起業家、ベンチャー経営者、およびそれを目指す若者の、いわゆる「意識高い系」へと広まっていきました。
さらにこうした層は「アート」や「デザイン」の知識を好むことから、枯山水などのシンプルな「禅デザイン」への興味が広がったのです。
枯山水の精神世界に中国人観光客も浸る
そんなこともあってか、慈照寺銀閣にある庭園は中国人観光客に人気となっています。
錦鏡池を中心とする庭園には、さざなみを思わせる銀沙灘と、白砂が盛られた円錐型の向月台と呼ばれる、美しい二つのアートがあります。
これは観月のために作られたと言われており、銀閣寺を象徴する光景のひとつになっています。
元来、精神世界や作り手の心情風景を重視した枯山水の庭園に感銘を受ける中国人が増えているということでしょうか。
僧侶であり、庭園デザイナーである枡野俊明さんによる著書や写真集も中国語に翻訳されており、禅に興味を持ち、見聞を広げたち中国人たちに愛読されているようです。
華やかな印象の金閣寺に比べ、落ち着いた印象の銀閣寺。
質素ではありますが、そこに宿る日本人の心が、訪れる人を魅了し続けているのかもしれません。
銀閣寺の観光で必要なことのひとつに、目の前にあるもののさらに奥にあるものを見抜く感性だといわれています。
静けさの中で、日本の風情を感じられる慈照寺銀閣を訪れる中国人観光客は、まだまだ増えそうです。