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【中国人気振り返り】 2018年中国で人気となった日本商品は 「買った」クチコミ振り返りレポート!

今年も残すところあと1か月足らず。いろいろあった1年ではありますが、今年も多くの日本商品が中国消費者の間で話題となり、購入されていきました。それでは、「今年一番人気になった商品」とは何だったのでしょうか?

中国トレンドExpressでは、中国SNS上のクチコミデータを集めたトレンドViewerの機能を駆使し、今年中国で人気となった商品を各セグメントごとに抽出した『2018年中国SNSクチコミ振り返りレポート』を制作。今回はその中から2018年10月末までのクチコミ総数と総合ランキングをお届けします。

■データ
トレンドViewer「買った」クチコミランキングから

  • 2018年1月3日~10月30日
  • 2017年1月4日~10月31日

までのクチコミ件数を収集、整理し作成。


クチコミ総数100万件増! 人気は「コスメ・美容」カテゴリー

2018年1月3日から10月30日までの期間、トレンドViewerで収集した「日本の商品を『買った』」クチコミ件数は743万7,727件にのぼりました。2017年(2017年1月4日~10月31日)の640万9,892件より約100万件の増加となっており、この一年で日本の商品が中国消費者からより高い関心を集めていることがうかがえます。

【グラフ】 2018年と2017年トレンドViewer「買った」クチコミ総数の比較

セグメント別に見ると、すべてのセグメントで2017年より増加しました。

最も多く「買った」とつぶやかれたのは「コスメ・美容」商品で、クチコミ総数の半分近くを占めており、これに「衛生・健康」、「医薬品」が続いています。これら3つのセグメントがクチコミ総数の7割を占める結果となりました。

【グラフ】トレンドViewer内2018年クチコミ件数のセグメント別の構成比

この構図は昨年から大きな変化はありませんが、注目すべきは昨年からのクチコミ増加率。続いては、各カテゴリーの増加状況を見てみましょう。

伸びる「ベビー・キッズ」カテゴリー。その背景にあるのは?

しかしながら、クチコミ件数の増加率をみると、クチコミ件数が2番目、3番目に多かった「衛生・健康」及び「医薬品」の伸び率は10%未満と停滞しています。一方、2017年から1ランク上げた「ベビー・キッズ」が23.2%増と唯一20%台に乗るなど、伸びが顕著です。これに「生活雑貨」、「コスメ・美容」、「ファッション」の順でクチコミ件数が伸びています。

「ベビー・キッズ」クチコミが伸びた理由には、中国では約40年続いた一人っ子政策が廃止され、現在は国を挙げて第二子の出産を奨励していることがあると日本のメディアや専門家が予想しています。

それはあながち間違いではないのですが、「子供の数が増える」という単純な理由とは言えないようです。

正しく言えば「子供の数が増えることによる競争の激化」への危惧から、「子供にはよりよい環境で、より強く、優秀な子供に」という意識が働くところにあります。

中国の大学入試戦争の激しさは日本でも報道され、広く知られていますが、現在の親たちには「子供が増える=名門学校(小学校~大学すべて)へのライバルが増える」と考える人も多いようで、それゆえに子供に使う物には少しでも良いものを使おうとし、より高い安全性の日本商品を求める傾向もあると思われます。

また質が良いだけでなくデザインや使いやすさに優れた日本のベビー・キッズ用品へのニーズはより一層高まるといえ、「ベビー・キッズ」は今後の伸びが期待されるセグメントといえるでしょう。

【グラフ】 2018年のセグメント別のクチコミ件数と増加率

2018年、もっとも「買った」とクチコミがされた日本商品は?

では気になる2018年にもっとも「買った」とクチコミされたのはどの日本商品だったのでしょうか?

総合ランキングTOP20は以下のような結果となりました。

【表】 2018年クチコミ件数が多かった日本商品の総合TOP20

順位 前年比 2018年 2017年
1位 ピジョン 薬用ローション(ももの葉) (ピジョン) サンテFX
2位 サントリーシングルモルトウイスキー 山崎(ビームサントリー) 龍角散ののどすっきり飴
3位 口内炎パッチ大正A(大正製薬) スクワクレンジング
4 雪肌精コーセー) 白い恋人
5 Moony(ユニチャーム) ロリエ エフ しあわせ素肌
6 メガネクリーナ泡シャンプー(小林製薬) ガム・デンタルブラシ
7 ベイビッシュ うるおいマスク(コーセーコスメポート) 薬用スキンコンディショナー エッセンシャル
8位 白い恋人(石屋製菓) 雪肌粋 ホワイト洗顔 クリーム
9 馬油ナチュラルミルクローション(コスメテックスローランド) キレイキレイ 薬用ハンドソープ
10位 スクワクレンジング(ハーバー研究所) 雪肌精
11 メガネクリーナふきふき(小林製薬) 液体ムヒベビー
12位 液体ムヒベビー(池田模範堂) moony
13位 雪肌粋 ホワイト洗顔 クリーム(コーセー) メガネクリーナふきふき
14 サンテ ボーティエ参天製薬 パーフェクトホイップ
15 ソフィーボディフィット軽やかスリム(ユニチャーム) 夜遅いごはんでも
16 UREA 尿素10%クリーム(エフティ資生堂) 口内炎パッチ大正A
17 大人のカロリミット(ファンケル) 新コンタック かぜEX
18位 ロリエ エフ しあわせ素肌(花王) エッセンシャル エアリーモイスト トリートメント
19 象印 魔法瓶象印マホービン キッカ メスメリック リップスティック
20 ポリベビー(佐藤製薬) サンテ ボーティエ

今年全体でクチコミ件数トップとなったのは「ピジョン 薬用ローション(ももの葉)」(ピジョン)で、2017年TOP20の圏外から一気に1位の座を獲得しました。

おもに赤ちゃんのあせもやオムツかぶれ、冬場の乾燥投防止などを目的に使われていますが、あせもやアトピーなど、肌トラブルに長年苦しんでいるというユーザーも中国SNS上に見え、また、超敏感肌の消費者は、化粧水代わりに使用している方も多いのが特徴です。


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続く2位には「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」がランクインしました。

同商品は、日本のウイスキーブームがソーシャルバイヤーやビジネスマンを通じて中国へと広まり、いわゆる「爆買い」を引き起こした商品です。

さらには近年中国ではウイスキーを「ステイタス」としてとらえる傾向が強まり、洋酒ブームが徐々に拡大。日本も「世界5大ウイスキー産地」として認知されていることから消費が伸びたと思われます。


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このTOP20は1月から10月までのクチコミ件数も4万件を超え、中国消費者の間でも非常に高い知名度を誇っている商品。同時に日本国内のソーシャルバイヤーたちも購入に走る人気商品となっています。

ただ両商品はクチコミの上昇の仕方が異なります。

「ピジョン 薬用ローション(ももの葉)」は急速に口コミ件数が増えたわけではく、2015年6月10日週に初登場後、徐々にクチコミを積み重ねてきた商品。こうしたタイプは中国消費者に浸透させていくことはできますが、どうしても時間がかかってしまい、メーカー側の体力が求められるのが難点です。

対する「サントリーシングルモルトウイスキー山崎」は急激に人気になり、それが一定期間継続したパターンです。

こうしたケースは短期間で人気商品となり「爆買い」を引き起こすことでインパクトはありますが、継続力が乏しいという点がデメリットでもあります。

2019年はこの両者のクチコミがどのような変動を見せるのかに注目することで、中国における認知拡大のセオリーが見えてくるかもしれません。

移ろいゆく中国消費者のブーム。対策は?

さて、この人気商品TOP20ですが、2017年と比べるとずいぶんと顔ぶれが異なっていることが見て取れます。

しかし、「サンテFX」がTOP20圏外に下がったのに対し、同じ目薬類の『サンテ ボーティエ』は、2017年からランクを6つ上げて14位にランクイン。

そこから見えるのは、目薬類は依然として中国消費者からのニーズが高い商材なのですが、そのニーズの対象となるブランドが移っている。すなわちブランドスイッチが広く起こっていると言えます。

これは、中国消費者が得ることができる、日本の情報が増えたことが影響しています。

これまではWeiboの限られたKOLや日本にいる、または日本へ旅行に行った友人などからもたらされる情報がすべてでしたが、近年は日本の商品を紹介するKOLも増加し、またそうしたKOLを通じてプロモーションを行うメーカーも増えたため、中国国内にいても目にする機会が多くなりました。

また、Wechat公式アカウントの中には日本情報を専門に発信するアカウントもあり、さながらメディアのように日本の事件や流行、新商品などをほぼリアルタイムで発信しています。

そして決定的なのは、やはりソーシャルバイヤーの活躍です。

日本国内に数多く存在するというソーシャルバイヤーは、絶えず日本の商品を中国にいる自身のフォロワー向けに発信しており、さらにその商品に関する詳しいレクチャーも行うため、中国消費者もより多く、また良質な日本商品情報に触れることが可能になりました。

こうした情報発信が消費者の購買意欲を刺激し、その目が「前年とは異なる新しい良い商品」へと向けられ、異なる商品、異なるブランドが人気となっていると考えられます。

こうした市場では、どれだけ消費者の「心に残るか」が非常に重要になってきます。自社だけではなく、同セグメントの他商品の浸透度合いを把握しつつ、消費者に対しての継続的な訴求が求められていくことになるでしょう。

次回は本レポートのコスメ・美容セグメントを見ていきます。