【訪日中国人】 大阪の台風、北海道の地震。中国からの訪日観光への影響は?
間もなくやって来る国慶節。インバウンド事業にとっては中国からの訪日観光客を受け入れる、非常に重要な期間です。しかし、今年の国慶節にはやや不安な要素が。大阪を襲った巨大台風、そして北海道を襲った地震という2つの自然災害です。復旧は進んでいるとはいえ、まだ少なからぬ被災者が不便な生活を送られているなか、メディアではインバウンドへの影響と経済効果、さらにはそれによる復興への悪影響などなど、多くのマイナス要素が語られています。
今回の週次ランキングは少し趣を変えて、今回の自然災害につていのクチコミ状況を見てみましょう。
まずは最新(2018年8月29日~9月4日)の「行った」ランキングトップ10から。
▼関連記事
【訪日中国人】 大阪城公園>USJ? 依然として人気の中国からの訪日旅行 国慶節ニーズへのヒントは?
今週の訪日ワード:「大阪、北海道」
両都市ともに、日本の訪日観光においては人気上位の定番都市、インバウンド市場における「勝ち組」といってもいいでしょう。
大阪は中国最大の経済都市・上海と友好関係にあり、古くから日中間のビジネス交流などが行われてきました。また大阪の食べ物として有名な「たこ焼き」は、中国でも「章魚小丸子」と呼ばれて人気の日本食です(時々中国風にアレンジがされているのを見かけますが)。
さらには中国の旅行予約サイト「途牛」の調査では「大阪城公園」と「ユニバーサルスタジオ」の2つが「日本で行きたいスポット」TOP2を占め、ますます人気が高まっているエリアです。
もう一つの人気都市・北海道は、中国の人気映画「非誠勿擾」の舞台となったことで一気に人気が高まりました。特に冬場はスキーなどのウインタースポーツ目当てに数多くの観光客が道内に訪れます。
また、トマムには中国資本のホテル「トマムリゾート星野」があることから、中国からの観光客が多く訪れるスポットとなっています。
そんな人気スポットを襲った今回の自然災害。中国の消費者たちはどのように反応したのでしょうか?Weiboの書き込みを見てみましょう。
「行きたい」けれど「行けない」。でもやっぱり「行こうかな」~大阪
今回の2つの災害、中国での正規メディアなどを通じて素早く報道されました。
一時的に「大阪領事館が中国人観光客を優先的に移動させた」といった不正確な情報が中国国内でも流れましたが、重点は被害の大きさを客観的に語るもので、ネガティブなものは見当たりません。
これを受けた中国消費者に反応ですが、「怖い!」や「もう大阪行くのやめよう!」といったものではなく、別の声が満ちていました。それは…。
「予約していた大阪行きのフライトがキャンセルになった!」
というもの。
つまり大阪に関しては「行きたいけど行けない」という意識の消費者が多くいたことになります。
実際に関西国際空港が深刻なダメージを受けたことで多くのフライトがキャンセルになりました。なかでも上海吉祥航空や春秋航空といった、団体・個人旅行に利用されるLCCのフライトキャンセルが大きく影響しているようです。
しかしその影響というのも、
「飛べなかったのに何の保証もない!」
「キャンセルの知らせすら来ていない!」
「態度が悪い!」
など、航空会社に向けられたものでした。
そうしたなかでも「仕方がないから名古屋にフライトを変更して、陸路で大阪に入った」というツワモノもいるようで、「せっかく行くことにしたんだから、意地でも行く!」という信念が垣間見えます。
また、大阪の観光スポットに関する情報も普段通りアップされており、中国消費者の大阪観光への意欲は衰えを見せていないことが見て取れます。
航空会社も慎重に。しかし衰えない人気~北海道
続いて北海道の様子ですが、こちらもフライトのキャンセルが大きく影響しているようです。大阪の時と同じように、
「突然フライトがなくなったが、何の保証もない。どうしてくれるんだ!」
という内容の書き込みがWeiboにも多く見られました。
中には「大阪に行けなくなったので、札幌と思ったら地震。東航(中国東方航空)は10月までフライトを見合わせると言うし……。」
という不幸な人も。
実際、地震という継続して起こりうる災害の場合は、旅行会社や航空会社も慎重にならざるを得ないというのが実情です。
また、大阪の場合は名古屋などから入国して陸路という手段が選択できますが、北海道の場合は航空機での移動が大きな割合を占めています。特に中国の消費者は「北海道=飛行機でしか行けない」という認識の人も多いため、どうしても移動をあきらめてしまうケースが多いようです。
ただ、札幌在住の中国人やその友人などが交通機関の回復状況などをWeibo上で発信している書き込みも多く見られ、またそれらを収集して本番である「冬」に向けて準備しようという書き込みも見られることから、ウインターシーズンでの復調が期待されています。
国慶節まで残り約1週間。多くのインバウンド関係者が注目している両都市の状況。航空機という「足」がなくなってしまうため、今年の国慶節には少なからず影響はありそうです。
しかし、中国SNSの状況を見る限り、中国消費者の訪日観光への熱意は冷めていない様子。さらには国慶節後の年末~春節といった観光シーズンも控えています。
こうした「次」を見据えて、復旧に関しての情報発信を積極的に行っていく必要があるでしょう。