【中国APP】2大APP時代 モバイル決済も
WeiboにWeChat…。すでに日本でも耳にするようになってきた中国SNS。特に中国関連業務に携わる者であれば、必須ツールともなっています。今回はその中国SNSの2018年第1四半期の様子を、モバイル調査機関「チーターモバイル」のデータを基に見てみましょう。
※用語解説
■週間アクティブ浸透率
チーターモバイル独自の指標。APP市場全体のアクティブユーザーのうち、何%がそのAPPを利用していたか。
■周平均起動回数
そのAPPのアクティブユーザーが、1週間で何回そのAPPを起動させたか。
まずはチーターモバイルの算出した中国SNSランキングを見てみましょう。
【参考】中国SNSの利用動向
APP名 | 週間アクティブ浸透率 | 周平均起動回数 |
---|---|---|
80.74% | 375.6 | |
32.43% | 173.4 | |
4.64% | 78.8 | |
陌陌(MOMO) | 1.53% | 202.4 |
QQ空間 | 0.79% | 43.2 |
探探 | 0.75% | 85.7 |
快手小遊戯 | 0.47% | 83.4 |
知乎 | 0.45% | 31.6 |
百度貼吧 | 0.45% | 117.3 |
QQ軽聊版 | 0.30% | 60.8 |
出所:チーターモバイル
やはりモバイルにおいてはWeChatの独り勝ち状態です。東京の電車や地下鉄内でもWeChatを開いている中国の方を多く見かけますが、学生からビジネスマン、企業の幹部に至るまで、すでにWeChatが無くては生活ができない状況になっています。
その状況を反映するように、アクティブユーザー浸透率、週平均起動回数ともに他の追随を許していません。
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QQからWeChatへ テンセントSNSも集約
昨年末にテンセントが発表した同社の2017年業務報告および財務報告によると、2017年Q4時点で月のアクティブユーザーが9.886億人を超えたことが公表されました。
2018年3月に人民代表者会議に出席したCEOの馬化騰から、春節後にはWeChatアクティブユーザーが「10億人を突破していた」ことも明らかになっており、また1年ほど前からWeChatは「ミニプログラム」という新しいサービスを展開。こちらも登録ミニプログラム数58万、ユーザー数1.7億人を記録しています。
意外だったのが2位の「QQ」です。すでに過去のツールという印象がありましたが、いまだに少なからぬアクティブユーザーを抱えています。
ただ、前述のテンセントの報告では2017年Q4には月のアクティブユーザーが昨年同時期に比べ9.8%の減少。具体的なユーザー数にすると7.8億人余りのユーザーが減少したことになります(内、モバイルユーザーは6.83億人の減少)。
さらに、同アプリのミニブログシステムである「QQ空間」に至ってはユーザー数が11.7%もの減少。5.6億人余りのユーザーが流出している計算になります。
図式としては「これまでWeChatとQQの両方を利用していたユーザーが、QQをあまり使わなくなった」ことが背景にある様子。これによってテンセントの「WeChat集約」がより進むというのが業界の予測です。
中国SNS広告市場を切り開くWeibo
また中国SNS人気の先駆け的存在と言えるのがWeiboです。日本では「もうみんなWeChatに乗り換えて、Weiboなんか使ってないんじゃない?」などとも思われているようですが、数字を見てみるとまだまだ人気が高い様子が見られます。
5月8日に発表された2018年Q1のレポートでは、今年3月までのアクティブユーザー数は4.11億人となっており、日本ではとかくライバルという形で比較されることから、アクティブユーザー数だけを見るとWeChatに大きく差をつけられている感があります。
しかし現在、Weiboのアクティブユーザーのうち93%がモバイルからの利用というデータもあり、PC発のアプリケーションとしては非常に速いスピードでモバイル化しています。
また、近年はその機能を生かしたマーケティングビジネスの展開も行い、2018年Q1の営業収入も22.1億元(内広告収入19.16億元)、5期連続で60%以上の成長を見せています。
その背景にあるのはWeibo単独でなく、動画サイトの「愛奇芸」や「優酷」、テレビ局「東方衛星電視台」などとの提携により、きわめて多くの番組視聴が可能となっていることです。
中国の年越し番組『春節聯歓晩会』のSNSパートナーとなるほか、今年のサッカーワールドカップにおいてはFIFAもWeibo内に公式アカウントを開設するなど、中国向けのPRに活用していくと見られています。
業界では、「2019年に中国におけるSNS広告の市場規模は800億元に達する」とも予想されていますが、その中心にWeiboがいることは間違いなさそうです。
両者の機能は全くの別物。WeChatが「モバイルに特化した会話用SNS」(LINEに近い)として誕生したのにくらべ、WeiboはまずPC用に開発されたものであり、その目的も会話ではなく情報発信(TwitterやFacebookに近い)なのです。
モバイル決済市場Big2の戦いに
さて、中国のSNSと結び付けられて日本でも注目されているものに「モバイル決済」があります。すでに日本のコンビニやドラッグストアではAlipayやWeChatPayなどを導入し、中国人訪日観光客向けにサービスを提供している店舗も増えてきました。
市場調査会社eMarketerの調査では、2017年の中国における「第三者決済サービス」による交易規模は152.9兆元。2015年に37.2兆元であったことを考えると、2年で約3倍に成長していることになります。
そのうち、モバイル決済が97.6兆元と全体の6割以上を占めており、中国のモバイル決済比率の高さを証明しています。
【グラフ】中国第三者決済の比率
さらにそのモバイル決済の内訳を見てみると、「Alipay(支付宝)」とWeChat Pay(微信支付)・QQPayを運営する「Ten Pay(財付通)」で90%以上を占めています。
両社の割合ではAlipayがTenPayを圧倒しているように見えます。
しかし中国消費者の話を聞くと、ケースバイケースで使い分けている模様。例えば「公共料金やタクシー、また送金・振り込みなどはWeChat Payを、買い物ではAlipay」といった形です。
【グラフ】中国モバイル決済ツール比率
SNSの拡大に紐づいたモバイル決済も、越境EC、インバウンドにおいては悩ましい課題となっています。それを解くカギは、やはり中国消費者の声をきちんと聞いていくことにありそうです。