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抗がん剤輸入関税ゼロ政策始まる。 中国の癌治療に新たな光に?

このほど、中国では新たに「海外の抗がん剤の輸入関税をなくす」との施策が始まりました。抗がん剤および癌治療に効果のある輸入薬は関税がなくなり、かつ増値税も大幅に減額されることになりました。この背景にあるのは「高額な癌治療費」、そして根本たる「癌発症数増加」です。今回はそんな中国の「癌事情」について見ていきましょう。

この「輸入抗がん剤関税ゼロ政策」、2018年5月1日からスタートされています。それだけでなく、輸入抗がん剤の「増値税」も減額、医療保険適用対象の輸入抗がん剤に関しても範囲を広げる準備に入るとも発表されており、中国政府が海外からの輸入抗がん剤に対して非常に積極的な対応を見せています。

高額に上る癌治療

この措置の最大の理由は、中国の癌治療における治療費が高額に上っていることが大きな問題として見られていることです。

 

中国の癌患者へのサービスを研究するレポートでは、現在、中国の癌患者が治療に支払う費用(自己負担分)は平均で14万元とされており、もしさらに分子標的治療など受けた場合、その金額は22万元。前者は中国の世帯平均可処分所得の1.75倍、後者に至っては2.7倍と計算されています。

 

浙江省腫瘍医院(がん治療の専門病院)の医師も「癌治療に十数万元かかるのはごく普通」だと話し、同時に「数万元レベルの抗がん剤を使用するには、やはり医療保険の適用というものが必要」との見方をしています。

 

今回の関税措置で注目されるのは、純粋な「抗がん剤」だけではないということでしょう。

発表された内容を見ると、対象となるのは「抗がん作用のある薬品」とされているようで、「化学療法」や「分子標的治療」、「生物製薬」などが含まれています。

抗がん剤においては、中国国内メーカーもレベルの高い治療薬を生産、販売していますが、こうした新しい治療方法および薬に関しては、いまだ海外のほうがレベルが高く、また患者側も輸入薬を望む傾向が強いのです。

そのため今回の施策は、その効果は認められていながら、高額であるために大きな経済負担を強いられていた、もしくは治療が受けられなかった、という患者には朗報となるでしょう。

 

報道では「実際、どれだけ安くなるのか、どこまで医療保険適用内となるのかは未定」としながらも、今後の中国における癌治療へプラス作用を期待しています。

増加を続ける癌患者

さて、中国がここまでして癌治療に積極的なのは、中国の癌患者数の上昇に歯止めがかかっていないということにあります。

先ほど「2018年全国最新癌症報告」が発表されました。これは2017年1年間に中国各地の「腫瘤登記中心(癌症例センター)」の癌症例を集約したものですが、データ登録には3年のタイムラグが生じるため、2014年時点の状況を網羅したものです。

 

それによれば、中国で1年間に確認された癌症例は380.4万例。平均すると1日1万人のペース、1分ごと7人が癌と診断されていることになります。これはその前の年と比べると、約3%の増加となっており、増加傾向には歯止めがかかっていません。

さらに言えば、当年世界では1400万例あまりの症例が報告されていることから、中国の患者数はその4分の1を占めていることにもなります。

 

参考:中国の新発症癌患者数

癌の中で発症する数が多かったのは、男性では肺癌が最も多く、その後、胃癌、肝臓癌の症例が多くなっています。女性では乳腺癌の割合が多く、また肺癌が増加傾向にあるとの報告がされています。

この背景にあるのは、男性の場合はやはり喫煙率の高さ。また地方では白酒(中国のリキュール。度数は50%以上のものが多い)の消費量も高いことから、依然として「お酒とたばこ」が原因として見られています。

女性に関していえば「乳腺癌」の増加。これは都市部で乳がん検診が普及し、発見率が高まったことによると推定されています。より注目されるのは肺癌。近年、北京や上海などの大都市では女性の喫煙が増加・低年齢化していることが影響しているのではとの見方もされています。

 

さらには同じく北京、上海などの国際都市では「ストレス社会化」が進み、職場や家庭において大きなストレスを感じているケースも増えており、新たな癌の発症源とも見られています。

 

中国政府ではこうした癌を生み出す条件の増加に頭を痛めているのです。

急増する「訪日健診」。その背後にあるのは「癌への恐怖」

さて、定期的な癌に関する数値の発表は、主に国民の予防意識を刺激する目的で発表されます。

それによって中国では健康意識、特に癌予防についての意識が高まりましたが、それが現在、日本に少なからぬ影響を与えています。

 

それが「メディアカルツーリズム」の増加です。

 

近年、中国から日本へとやって来る観光客のなかで、「健康診断」をツアーメニューの中に入れる人が急増しています。

日中間ではすでに、中国消費者をターゲットにしたメディカルツーリズムの企画会社や医療通訳士が業務を行っており、さらに少なからぬ病院で中国人を含めた「訪日外国人」の受け入れを行っており、インバウンドにおける注目カテゴリーとなっています。

こうした中国からのメディアカルツーリズムは、治療ではなく主に健康診断を目的としたものですが、特に多いのが「Pet-CT」。つまり癌検査です。

一般的な健診でも「腫瘍マーカー」が組み込まれているケースもあるのですが、中国では日本のPet-CTへの信頼度が極めて高く、メディカルツーリズムプランニング会社にも「必ずPet-CTは入れてほしい」という要求があるようです。

一般的な健診(1日人間ドック+Pet-CT)で、安いもので十数万円。高級施設による健診では50万円以上(1泊2日)のメニューも用意されていますが、多くの有名病院ではすでに予約でいっぱいという状況も少なくないとか。

多くの訪日観光客は1週間程度の滞在の内1日もしくは2日を健診に使い、あとは観光とお買い物を楽しんでいくのです。

 

中国が抱える「癌」問題。すでにその影響は中国国内にとどまらない状況となっている様子。今後も注目です。

 

<参考>

今天起,中国进口抗癌药零关税  出所:鳳凰網(中国語)

中国每分钟6人确诊为癌症 患者出现两极分化趋势 出所:新浪健康(中国語)

2017癌症数据调查报告出来后,中美数据并排看更令人震撼 出所:捜狐網(中国語)

如何评价「2018年全国最新癌症报告」? 出所:知乎(中国語)

全国肿瘤防治宣传周 | 2018年全国最新癌症报告 出所:健康界(中国語)