【特集】商品クチコミ6つのファクター (1)要素別に集計、見えてきた3つの道
中国人の消費行動には「SNS」が組み込まれています。商品購入前はクチコミを探し、商品購入後は書き込みを還元することが当たり前となっていることは、トレンドExpressで何度もお伝えしている通りです。
一言にクチコミと言っても、そこには「ソーシャルバイヤーの発信」「使用感想」「購入できる場所」など、様々なタイプの情報を含んでいます。
トレンドExpress編集部では一昨年、人気商品が現地でヒットした要因について書き込みを分類、集計しました。総数だけでなく「ソーシャルバイヤー発信件数」「ポジティブな使用経験が書き込まれた件数」「メディア発信件数」「企業SNS発信」に分別しその比率を計算、そこにさらに外部要因を加えた、合計6つの視点でヒットが起こった理由を分析しています。
一昨年の結果はトレンドViewerバックナンバーダウンロードページよりご確認いただけます。
▼バックナンバーVol.26 特集:人気の化粧品はどう変化?!~化粧品特集その2
今回は、昨今の人気商品をとりあげ、昨年同様6つの要素から考察を加えたいと思います。
6つの視点のうち「企業SNS発信件数」については、昨今影響力を持つ「KOLの発信件数」に変更し、現在の人気商品のヒットの理由を分析します。
評価指標と対象商品3点
まずは6つの視点とそれぞれの視点から読み取れるポイントについて確認しておきましょう。
分類 | わかること |
---|---|
SNS書き込み総数 | 商品認知度・評判の拡大 |
ソーシャルバイヤーSNS発信件数 | バイヤーの販売意欲(市場の需要) |
消費者使用経験(ポジティブ)件数 | 消費者の評価・評判の拡大 |
KOLによるSNS発信件数 | KOLを経由した評判の拡大、KOLを活用したプロモーションの成果 |
メディア発信件数 | メディアを経由した評判の拡大、PR施策の成果 |
外部要因 | タレント愛用、メディアでの紹介、事件(品質問題など)、為替、そのほか |
【調査概要】
調査対象:今回調査対象とした商品は「パーフェクトホイップ(資生堂)」「馬油ナチュラルミルクローション(コスメテックスローランド)」「フルーツグラノーラ(カルビー)」の3点です(カッコ内はメーカー名)。
集計期間:2017年4月~9月(半年間)、総数と項目ごとの小計
パーフェクトホイップ~購入者のクチコミ多数!KOLもつい紹介
まずは資生堂の洗顔料「パーフェクトホイップ」のクチコミバランスを見てみます。
パーフェクトホイップはここ数か月「日本で買ったランキング」上位の常連です。去年は、夏の17位の記録ののちはダウントレンドとなっていましたが、今年の4月下旬に10位まで回復し、ほとんどTOP10から脱落していません。
(グラフにはSNS書き込み総数、外部要因は含まない。ソーシャルバイヤーSNS発信、消費者使用経験(ポジティブ)を除くSNS書き込みを「その他」に分類。以下同じ)
パーフェクトホイップの6つの要素のバランスを見てみると「消費者の使用経験(ポジティブ)件数」と「KOL発信件数」が多くなっていることがわかります。「消費者の使用感想」が購入の後押しをする重要なファクターとなっているのかもしれません。
▼クチコミにもいろいろある!その中でも「極上の」クチコミとは?
【セミナーレポート】China Beauty(4) ~リピート購入と「極上の」クチコミを招くサンプリング~
リンク先で紹介しているような「サンプリング」だけでなく、KOLの発信により購入者が増加するケースも考えられ、使用感想はKOLの発信件数に影響を受けている可能性もあります。
評判の良さにKOLが目をとめる!
反対に、購入者のポジティブな感想をみてソーシャルバイヤーがさらに取り扱いを増やすといったように、相互に影響を与えている状況も考えられます。「資生堂」「パーフェクトホイップ」がすでに人気商品の代名詞のようになっている点も、KOLによる発信件数を後押ししているのではないでしょうか。
KOL発信により使用感想が生み出されているという仮説に基づけば、さらなるクチコミ拡大を引き起こすためは、KOLを活用したプロモーション施策の推進が効果を発揮しそうです。
同商品の6要素バランスの特徴としてもう一点、「メディアの発信件数」がほとんどないという点が挙げられます。PR施策などによりメディアへの情報露出が実現すれば、一次情報を紹介するユーザーのクチコミという形で、SNS上での拡散がさらに増えるかもしれません。
▼「一次情報」の発信は、中国人消費者への訴求の第一歩に最適!
【セミナーレポート】国慶節需要を逃さない!(4)KOL施策では3つの落とし穴に注意
訪日土産として定番化、「日本人の知らない人気商品」馬油
2015年9月から「買ったランキング」に登場している「馬油ナチュラルミルクローション」は、ランクイン以降50位以内を安定的に推移していました。
同商品は今回取り上げるほか2つのアイテムと異なり、「見たことがない」「聞いたことがない」という方も多いのではないでしょうか。
▲馬油ナチュラルミルクローション(コスメテックスローランドホームページより)
同商品はポンプ式のミルクローションです。パッケージに大きく「馬油」と漢字がデザインされ、中国人にとって識別しやすい製品となっていることが考えられます。
この商品の「日本で買った」ランキングでの順位に変化があったのは今年の春節を過ぎたあたりの2月です。2017年7月には自己最高の4位を記録しました。
その後も20位前後を推移し続けています。2年をかけて人気商品としての立場を確立したようです。
クチコミを見てみると、KOLやメディアによる情報拡散はほとんどみられません。「ソーシャルバイヤー発信件数」と「消費者使用経験(ポジティブ)件数」に山が見られます。
現在はプロモーションをあまり行っていなくともある程度売れている商品といえるようです。日本旅行のお土産として定番化している状況がありそうです。今後プロモーションを実施していくことで、近年話題にされていなかった分、また新たな層の注目を集め、ファン層を形成していく可能性もあるのではないでしょうか。
クチコミをメディアがおいかける? その後も検索指数高く
検索エンジン「百度」での検索指数の変動を核にしてみると、2014年に爆発的に話題となっていたことがわかります。「百度指数」の結果には媒体での掲載数を示す「媒体指数」のデータもありますが、こちらは検索指数の山ののち、2015年に盛り上がっています。
トレンドExpressでクチコミ件数の計測を開始したのは2015年5月ですが、同商品が「日本で買った」ランキングへの登場するまでに数か月かかっています。前述のとおり同商品のクチコミはその年の9月にランキング50位に登場しました。メディアでの掲載を目にして関心を高めた消費者やソーシャルバイヤーによるものとも考えられそうです。
媒体指数のピークを迎えた2015年以降は、検索指数は低下するものの一定の水準を保っています。今年2017年も10月に入り検索指数がはねていることがわかりました。「冬の乾燥対策」という側面があるのではないでしょうか。
「容量」たくさん使えるコスパの良さが消費者の心をつかんだ?
クチコミの「その他」は、使用感想(ポジティブ)以外が含まれますが、実際にどんな情報が露出しているのでしょうか。
「まあまあ容量があるから3か月弱使える」というクチコミからは「コスパ重視」「価格以上の価値を求める」消費者心理が見え隠れします。
「ずっと、馬油のクリームだと思っていたものが、ボディソープだった!」というように、系列製品のパッケージにわかりにくさが存在している可能性がうかがえる書き込みもありました。
またつい先日も「買った!」報告の書き込みが上がるなど人気の継続を感じさせます。使用感想には「匂いが悪くない」「べたべたしすぎない」といった特徴が広くファンを獲得している様子がうかがえました。
「馬油」は無添加という特徴から、妊娠中の女性や乳幼児といった「肌に触れるもの」に最も敏感になる時期に使ってよい製品の代表格になっているようです。今回の結果から、様々な「製品情報」が同商品の人気を支えている可能性が見えてきました。
フルーツグラノーラ ~ソーシャルバイヤーの注目商品
最後にシリアルの「フルーツグラノーラ」を見てみます。
中国ではシリアルは「麦片」と呼ばれます。お湯でお粥のようにふやかしてから牛乳を加える「麦片粥」という食べ方や、飲料としての牛乳に混ぜるなど朝食シーンにはよく登場します。
「フルーツグラノーラ」はトレンドViewerの「日本で買った」ランキングには今年3月に初登場しました。
最高順位は今のところ167位とトップ100圏外の域を出ませんが、今年に入り越境ECでの積極的な販売が展開されています。今後の売れ行きが気になる商品です。
同商品は、これまで見てきた2商品と比較して「ソーシャルバイヤーの発信件数」が突出しているのが特徴です。越境ECでの販売が活性化してきていることに、ソーシャルバイヤーは勝機を見出しているのではないでしょうか。
引き続き、ソーシャルバイヤーの発信が消費者使用経験に関する書き込みを増幅させるのかどうか注視していく必要がありそうです。
ソーシャルバイヤー発信件数に続き「その他の書き込み」も高い比率を締めています。「メディア発信」がその次に続きます。中国で全国的に注目を浴びる報道番組「315」で取り上げられたことが背景にあるでしょう。
今回集計したクチコミ総数における「KOL発信件数」や「メディア発信件数」の割合はそこまで高くありません。プロモーション活動は積極的に行われていないことが見て取れます。
ECの展開により今後は購入を意味する「消費者使用経験(ポジティブ)件数」が増えていくとも考えられます。消費者への能動的な訴求によっては、その増幅を大きくすることも可能となるのではないでしょうか。
まとめ
それぞれに人気の3商品ですが、ヒットのエンジンをかけたのは「商品の優れた効能」、「安全性の高さ」、「越境EC進出の話題性」と三者三様である可能性が見えてきました。
すでに人気となっている商品の中国でのプロモーション施策では、今回とりあげた5つの要素を踏まえ、谷となっている部分での重点的な対策をとることで、人気をさらに拡大していくことができるのかもしれません。
次回は3商品の書き込みが、各項目で半年間どのように推移しているのかを見ていきたいと思います。
▼続きはこちら