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中国女性のスキンケアは「食」 若者にも浸透する「養生」とは?

中国といえば「食」の国。日本でも数多くの中華料理店があり、東京などでは中国の地方料理を楽しめる店も少なくない。

しかし、中国の「食」は決してお腹や舌を満たすだけのものではない。食、漢方、美容は一体化しており、年齢層を問わず「食による美容」が定着している。

中国市場で売れ行きの日本商品といえばスキンケア、ついで健康サプリメントであるが、さらなる市場拡大を狙うためにも、中国女性消費者のスキンケア手法ともいえる「養生」について理解しておこう。

食べ物が体調を左右する~中国の「食」

まず、中国の伝統的な「食」の考え方を見ていこう。もともと「医食同源」という言葉があるように、中国では伝統的な漢方医学的な考えが現代社会でも浸透している。

 

中国の食事でよく聞くのが、食べ物(食材)の「寒」と「熱」。

体を冷やす作用がある「寒性食物」と、逆に体を温める「熱性食物」、そしてどちらでもない「中性食物」があるとされる考えだ。

この冷える、温めるというのは、必ずしも「体温の上がり下がり」を示すのではなく、現代医学的に言えば血行を鈍らせる・活性化させるといった意味合いに近い。

 

特に中国では「体を冷やす」ことにネガティブな意識があり、多くの病気が「冷える」ことによって引き起こされると考えられている。日本の飲食店のお冷に慣れず、暖かい、もしくは常温の飲み物を求めるのはそのため。

 

寒性食物で日本人がよく出会うケースが上海で「上海蟹」を食べる時。必ず食後に「生姜茶」が供されるが、これは蟹が体を冷やす「寒性食物」であり、食べた後は冷えた体を温めるために「熱性食物」である生姜を取らなくてはいけない、という考え方による。

 

では熱性食物だけを取ればいいかというと、そうでもない。

温めすぎるとかえって別の不調が現れるという。中国の一般会話で聞かれる「上火(shanghuo)」という言葉がそれだ。

これも漢方の概念の一つで、体の中の「火」の気が増えすぎ、体内の気のバランスを乱した結果、体に悪影響を与えていることを言う。

一般的な症状としては「ニキビ」、「口内炎」、「肌荒れ」、「むくみ」、「歯痛」、「頭痛」、「不眠」などなど。

 

さらに夏場の上海では「きゅうり」を食べている人を見かけるが、それはきゅうりが「寒性食物」であって、体の中の熱気を下げるという意味合いがある。中国のポテトチップスで「きゅうり味」があるのも、その派生である。

こうした食物の相性、季節性をとらえながらの食事も、中国独特の美容健康法といえる。

スキンケアは「食」から~「養生」のススメ

さて、そんな中国の食へのこだわりだが、そうしたこだわりが健康、スキンケアにも生かされている。

それが「養生」である。

 

本来は、主に食事や運動などによって体質を改善(美容効果含む)させたり、健康を維持したりする考え方。基本的理念は中国漢方から得るものが多く、身近な漢方薬材となる食材を使った家庭で作れる美容レシピ、運動法などを指す。

 

小紅書(RED)には、女性の健康に関する悩みに応じた「養生レシピ」が数多く掲載されており、多くの女性が閲覧している。

特に美顔育成法ともいえる「養顔」というキーワードを検索すると、実に14万件もの投稿がなされていることが表示される。

「養顔」には14万件を超える投稿が

その検索結果の大部分は、「肌にいいレシピ」、「血行を整える」、さらには「抜け毛を防ぐ」といった効果のお粥などが、身の回りで手に入る食材を使っての作り方とともに、写真・動画を含め数多く表示される。

しかも、そのほとんどが漢方医や専門家ではなく、個人でそうしたレシピを開発したり研究する一般ユーザーである。

開くと数多くのレシピが並ぶ

それにしても、紹介されるレシピは白きくらげを使って美白・やアンチエイジング効果を得る、ナツメやクコなどを使って血行を良くする…といったもので、非常に専門的なレシピが多く、多くの女性の閲覧を呼んでいる。

「髪を保つ・増やす」レシピ。黒豆や黒ゴマ、クルミなどのお粥

「一碗でフェイスマスク30枚分の効果」という美肌レシピも

気管や肺を潤わせ、肌にも水分を与えるスープは動画で紹介。

こうした美容養生レシピ、使っているのは年配層が多いのかと思いきや、意外と20代女性も多く、中には「宿舎養生」という投稿も小紅書上に少なくない。

なかには女子大生が大学の宿舎(中国の大学は寄宿制)に置くべき養生食品などの紹介投稿もあり、非常に若い世代から食事によるスキンケアへの意識が高いことを感じさせる。

中国の女性は「養生」をどう使っているのか?

では、中国の現代女性はこういったレシピをどのように使っているのだろうか?

 

中国の女性消費者に話を聞いてみると「化粧品のスキンケアは外側、養生(養顔)は内側を整えるもの」(上海在住30代OL)という意識でいるとの回答が返ってきた。さらに話を聞くと「こうした料理で体の基本状態を整えると、外側(スキンケア、エイジングケア化粧品)の効果に100%頼らなくてよくなるから…」。

 

また北京に住む40代の女性(会社経営)は「こうした養生レシピは使っているスキンケアの効果を高めるためにする」と語る。

オフィスで働く女性では、前日の夜や朝にこうした「養顔」メニューを作って、保温ポットなどに入れて会社に持っていくというケースも少なくない。

また「普段からこうしたメニューを食べている」女性もいるのだが、多くは「肌荒れなど、気になる部分が出てきたら一定期間(1~2か月)こうした料理を食べる」というパターン。

金柑、白きくらげ、ナツメで美白・美肌効果

またビタミン補給などについても、ソーシャルバイヤーから購入した日本製のビタミンサプリやコラーゲンを使用しつつ、同時にコラーゲンを含んだレシピを調べて、それを食べるという女性もおり、程度の違いはありながらもその双方をふんだんに利用し、スキンケア、エイジングケアを行う姿が見て取れる。

 

決してスキンケア化粧品やサプリ効果を否定するわけではないが、それだけに頼らない、もしくはそれを補うものを「養生」レシピに求めているようで、日常生活において養生レシピで体全体を整えつつ、スキンケア化粧品やサプリメントで補強していくという使い方になるだろう。

やはり女性からすると、こうしたケアは「やりすぎることはない」(前出30代OL)ということらしく、体の内外、全方位的に肌を整え、若さを保とうというのである。

 

ちなみに、中国のEC・小売り専門媒体である「億邦動力」の報道では、春節1週間における「健身(フィットネス)」キーワードの投稿が3万件、昨年同時期比で2倍以上であったことが報じられている。

美容、健康への意識が高まりつつあるが、こうした「食の美容法」も若い世代に普及、より注目を集めている。

こうした消費者の興味も、中国独特の美容法なども中国向けの訴求に生かしていきたいものである。